「胡同(フートン)のひまわり」(中国 2005年)

これは文化大革命に翻弄された男の物語。
これは父と息子の対立と葛藤の物語。
映画レビューはネタバレしません。
B000JUB71M胡同(フートン)のひまわり
スン・ハイイン
ハピネット・ピクチャーズ 2006-12-22

by G-Tools


 去年スガイ札幌で上映していて気になっていた中国映画です。

1976年文化大革命後の北京。
父親が強制労働から6年ぶりに帰って来たことで
9歳のシャンヤン(向陽)の生活は一変する。
絵が描けなくなった画家の父が夢を託そうと
絵を教え込みはじめシャンヤンは激しく反発する。


父子の話だと聞いていたのでナントカの一つ覚えで
「北京ヴァイオリン」のような感じをイメージしていました。
同じ中国映画でもむしろ「玲玲(リンリン)の電影日記」に
近いような気がします。
ある家族・・・ある父子を通して見る激動の中国現代史。

プロレタリア文化大革命の時代、
再教育の名の元に当初は事業家などの資本家層が、
続いて学者、医者などの知識人が強制労働に狩り出されました。
画家であったために僻地の農村に追いやられ、
強制労働に従事させられた父。
彼の手もある意味では狙い撃ちされたのかもしれません。

胡同(フートン)は伝統的民家が密集した細い路地のこと。
中国の伝統的家屋建築である四合院(ピンイン)は
建物で中庭をロの字形に囲んだ何世帯かで住む伝統的な住居。
その四合院の妻子の元にやっと帰ってみれば
息子にとって自分は存在さえあやふやになっている。
それどころか母とふたりのびのびと暮らしていた息子には
突然現れた父親は乱入者でしかない。
下放での体罰が元で絵筆が握れなくなった父が見出した
息子の才能。
遊びたい盛りの息子に英才教育を始める父と
激しく反発する息子。

わからなくはないんです。
歌えないカナリア、飛べない鳥・・・描けない画家。
息子に夢を託そうという切なる想い。

何年か後に息子の大きな才能が花開くかもしれない。
でも自分の思い通りに育てようと言うのは暴力でしかない。
自由を奪われたシャンヤンはミシンの前に座るところまで
追い詰められている。

自分を強制労働に追いやったのは親友だった。
そんなつもりは微塵もなかったと頭ではわかっていても、
でも許せない。
戻らない6年(普通は2年くらいだったそうです)の歳月、
失った画家としての現在と未来と。

アパートに引っ越せるようにと妻の願いのとおりに
偽装離婚してまでしても父は胡同から動かない。
確かにこのお父さんは不器用で意固地で。
親友との極端な将棋も(苦笑)。
・・・時代だったんですよね。
お父さんは絵を好きで諦めたわけではないし。
可愛い盛りの子と引き裂かれてしまって
父も子もお互いに付き合い方も愛し方も学べなかったのだから。
でもそれが父の精一杯の愛情表現と言われると・・・。
息子の初恋の相手への両親の仕打ち。
(この時先方の親の姿がないのも不自然なんですが。)
大人になったシャンヤンの妻の身体を気遣う母。
・・・エゴにしか思えない。

シャンヤンの描く絵は家族の肖像。
でも父が教えたものではなく新しい時代の画法。
中国現代アートのジャン・シャオガンによる
「全家福」シリーズだそうです。
(「全家福」は家族全員が揃った記念写真のこと。
60〜70年代にかけて中国各地の映画館で撮影された写真を元に、
両親の間に子供が1人、全員真っ直ぐ正面を向いている)
私は好きにはなれないけれど。

あのネコの母子は新しい居場所を見つけられたかしら。

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