「みえない雲」(ドイツ 2006年)

サイレンが鳴り響いたその時から、
恋も家族も友情も・・・日常の全てが奪れ崩れ落ちていく。
映画レビューはネタバレしません。
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 2007年7月16日、大きな被害を出した新潟県中越沖地震。
 これに依る東京電力柏崎刈羽原子力発電所の火災で、
 ある意味とてもタイムリー(ー'`ー;)になってしまったのが
 原発事故をテーマにしたこの映画です。

幼い弟と母親の3人で暮らす高校3年生ハンナは
転校生のエルマーと恋に落ちる。
人気のない教室でのキスの最中に突然サイレンが鳴り響く。
近郊の原子力発電所が事故を起こしたのだった。
必ず迎えに行くというエルマーの言葉を信じ、
ハンナは弟と自宅で待つが・・・。


チェルノブイリ原子力発電所事故は1986年。
もう20年前以上前のウクライナ(旧ソ連)の大事故を
知らない方も多いと思います。
運転員・消防士、事故の処理にあたった予備兵、軍人など
約13,000人が放射線障害で死亡したと公式には言われています。
(この数には周辺住民の犠牲者はカウントされていません。)
このチェルノブイリ原発事故の翌年に発表された小説が
原作(私は未読)の映画です。

CGで事故の描写で見せるわけではありません。
事故を伝えるのはラジオなどの声だけ。
でもそれが不安を煽っていく。
エルマーの迎えを待ち、
出張中の母と連絡を取ろうとするうちに逃げ遅れてしまう姉弟。
そのハンナに一緒に避難しようと声をかける近所の方。
パニック状態でも人々の心にはまだ余裕が、
他人を思いやる気持ちがこの時にはまだあったのです。

弟を宥め励まし駅に自転車で向かうハンナの目前での悲劇。
劇場予告で知っていたので
ちょっと身構え覚悟していた部分がありましたが、
でも言葉を失くしてしまいました。

思春期のハンナと母の衝突、
裕福ながら父母の愛情に飢えているエルマー。
このふたりのラブストーリーとして見ればいいのでしょうが、
特にハンナの発病後はエピソードごとに切り替えが多くて、
全体の流れが悪くなったのが残念です。
"放射能汚染の拡がり方に現代の医学知識と合致しない部分がある。"
被爆をテーマにしたダニエル・キイスの「タッチ」には
そのような断り書きがありました。
この映画もつじつまの合わない部分があり、
実際展開に少々無理があります。
あれでは医療関係者は全員二次被爆してしまうでしょうから。

"卒業したら村を出よう"
ささやかな夢は思わぬ形で否応なく叶えられた。
"ハンブルグの大学に進学しよう"
そう話した親友アイシェが被爆したハンナを見つめる目。
冷たい視線と無知や偏見に晒され嫌われていく被害者たち。
(このあたりの描写は「タッチ」はもっと辛らつです。)
かすかな希望と押し寄せる現実。

実り豊かな大地の作物は枯れ果てている。
陽射しは降り注ぎ風が吹いても・・・そこには命の息吹はない。

恋人たちに残された時間は少ない。
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タッチタッチ
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