「わが教え子、ヒトラー」(ドイツ 2007年)

アドルフという名を持つ男ふたり。
総統と呼ばれる男とユダヤ人俳優。
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2008年度日本インターネット映画大賞外国映画部門投票時には記憶から抜け落ちていたのですが、
実は昨年はもう1本新作のこれを観ていました^^;。
胃がんのため54歳の若さで死去した
『善き人のためのソナタ』ウルリッヒ・ミューエの遺作となった作品。
それにしても原題が『Mein Fuhrer』ですから、
『我(ら)が総統』と素直に邦題にした方が
良かったのじゃないでしょうかねぇ・・・好みの問題ですけれど。
12月13日シアターキノにて。

1944年末、連合軍との戦いに相次いで敗れ、
完全な劣勢に陥っていたナチス・ドイツ。
ヒトラーの腹心の宣伝大臣ゲッベルスは
翌年1月1日にベルリンで100万人を前にしたヒトラーの演説会を企画。
ところがドイツ軍劣勢の報に自信を失ったヒトラーには、
かつての雄弁な演説など不可能だった。
そこでゲッベルスが白羽の矢を立てたのは、
強制収容所にいた世界的ユダヤ人俳優グリュンバウムだった。


シリアスではなくコメディというか・・・悲喜劇。
ゲッペルスからヒトラーの再生を命じられた
実在のオペラ歌手の話を下敷きに設定を
架空のユダヤ人で元俳優の大学教授にしたのが本作品。

本編エンディングのインタビューでも世代によって
開きがあった現代ドイツ人のヒトラー観。
ドイツは先の大戦について教育していると聞いていたのですが、
それでも戦争の記憶は薄れていくようです。
この映画のようにヒトラーを人間的に描くのは
少し前まではタブーだったのではないでしょうか。
私にはグリュンバウムはもちろんヒトラーも
ゲッベルスの手の上にいるようにしか見えませんでした。

グリュンバウムがカーペットの下にハムを隠したのも
(ブロンディが召し上がりましたが・・・笑)
ユダヤ人の彼が生き抜く知恵だったのでしょうし、
収容所の家族や仲間に一口でも食べさせたからなのでしょう。

権力者の命令であっても延々と書類(規則)に則って行われる事務手続き。
(このあたりの融通の利かなさは日本人と通じる部分もありますが)。
複雑すぎて覚えきれずに言い間違える階級。
ひたすら繰り返される「ハイル・ヒトラー」の挨拶。
ヒムラーのギブスを敬礼の形で固定させ、
ブロンディにも左手左前足を上げさせてみたり。
(犬語で言っていたと思いますよ「ハイル・ヒトラー」と・・・笑)。
このあたりはユダヤ人監督の皮肉が込められているのでしょうね。
そして悪名高いSSがグリュンバウムの家族を監視しながら、
ユダヤ人の幼子をあやしている。

それでもヒトラーのカリスマに頼らなければならなかった第三帝国の末路。
廃墟のベルリンの町並みを急ごしらえのセットで作ったように、
心身を病んでいるヒトラーに演説会でスピーチをさせるためだけに呼ばれたユダヤ人。
実質的には人質であっても家族を呼び戻したグリュンバウムは
今度は収容所の仲間を開放させようとした。
そして彼は信じた・・・。

オープニングの、そしてラストでのグリュンバウムの
やり遂げたような清々しい表情。
でも自由になった彼らのその後が気になって仕方がありませんでした。

「真実の演出だよ。」
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コメント

昨年はたくさんTBありがとうございました。本年もよろしくお願いいたします。
オープニングの謎が最後に解ける、だけどちょっと悲しい話ですね。
ナチスものはいろいろとドラマがあり過ぎて、観ていると切なくなってしまいますが、人間の本質が表れやすい題材だと思います。

rose_chocolatさん、
こちらこそいつもお世話になっております。
本年もよろしくお願いいたします。
オープニングのグリュンバウムの表情と状況の謎が
最後の最後で解ける映画でした。
>ナチスものはいろいろとドラマがあり過ぎて、観ていると切なくなってしまいますが
特にホロコースト関係は酷い話ばかりですからね。
コメディなんですが笑うに笑えない切なさがありました。
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