「シリアの花嫁」(イスラエル/フランス/ドイツ 2004年)

イスラエル占領下のゴラン高原の村。
ひとりの花嫁が境界線を越えるその一日。
La Fiancee Syrienne - The Syrian BrideLa Fiancee Syrienne - The Syrian Bride
Colosseum 2005
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 リーフレットで直感的に観たいと思った一作は
 女性たちのしなやかさに希望と温かさが見える作品でした。
 4月4日スガイシネプレックス札幌劇場にて。

イスラエル占領下のゴラン高原の小さな村から
モナがシリアの遠縁の男性と結婚するために旅立つ日。
しかし花嫁モナも彼女も姉のアマルも悲しげな表情をしている。
"境界線"(現在の軍事境界線の意)を越えてシリア側へ嫁ぐと
おそらくモナは二度と村には戻れず実家の家族に会えなくなる。


結婚が人生にとって大きな節目&転換期になるのは
古今東西変わらないと思います。
花婿がシリアの売れっ子タレントで
写真とテレビでしか見たことのない相手であっても・・・相手なら尚更。
自衛隊も派遣されたことがある『ゴラン高原』。
正確な場所さえ私は知らなかったのですが(-"-;)
元々はシリア領だったそうです。
人々はシリアへの帰属意識を強く持っているそうで、
イスラエル国籍を取らない結果"無国籍者"となっているそうです。
併合したからとパスポートに出国スタンプを捺すイスラエル。
花嫁はシリア内を移動するだけなので
イスラエルの出国スタンプは受け入れられないというシリア側。
そしてイスラエル軍が管轄する"(軍事)境界線"を越えてしまったら
モナの国籍はシリアとして確定するために
イスラエルへの入国は不可能となり、
モナは実家の家族と生き別れの状態になってしまう。
(・・・第三国で再会するという手があるにはありますが。)

何とも特殊な状況の生活でありまた結婚なのですが、
でも変に難しい話にならないのは
この一家のキャラクターに依るものが大きいのだと思います。
親シリア派の活動家で投獄経験を持ち、
今も警察の保護観察に置かれている父。
父や長老たちに逆らってロシア人女性と結婚し勘当された長男。
イタリアで(怪しげな?)ビジネスをする次男。

結婚式(と言っても花嫁だけのパーティー)目前。
ウェディングドレス姿でひとりソファに残されるモナ。

結婚式当日のデモに参加する父(!)に抗議し、
その父のことで警察に談判に行き、
また兄と仲直りさせよう奔走するアマル。
父(アマル夫)に恋愛を反対される娘を励まし、
自分で運転し大学進学も決め・・・。
母は瞳の色が違い言葉も通じない長男の妻と孫を
村の女たちの中傷から庇っていく。
赤十字のジャンヌは無事にモナを嫁がせようと
"境界線"を行き来する。

イスラエルとシリアの意地の張り合いに、
結婚の日を5ヶ月も待たされ、
今度は"境界線"で足止めされるモナ。
ウェディングドレス姿でひとりフェンスの前で佇み・・・。

国連軍のジープが"境界線"を通り過ぎて行く。
ヘリコプターが"境界線"を飛んで行く。

そして花嫁は・・・。
そしてアマルは・・・。

それにしても谷(?)を挟んだ家族や親類が
拡声器でお互いの無事を確認し合いお悔やみを言う風景の滑稽さ。
・・・国境って何でしょうね。
モナに椅子を差し出した若いイスラエル軍兵士の姿が
妙に印象に残りました。
「ラミアの白い凧」・・・札幌で上映されないかしら。

"宝物をあなたに託す。
今日が姉妹最後の日。"
シリアの花嫁 [DVD]シリアの花嫁 [DVD]
ヒアム・アッバス, マクラム・J・フーリ, クララ・フーリ
CCRE 2009-10-02
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The KiteThe Kite
Flavia Béchara, Ziad Rahbani, Randa Asmar, Randa Chahal Sabbag
FIRST RUN FEATURES 2009-03-24
by G-Tools

コメント

こんにちは〜
私にはモナを取り巻く状況がさっぱり飲み込めず、恥ずかしながらかなりチンプンカンプン状態で観賞してしまいましたが、それでもとても興味深く面白く見れました。
無国籍って・・?
日本にいるとこれが当たり前なので、自由に行き来できない状態が想像できません。
始終暗い顔をしていたモナが、ラスト決然と清清しい顔になったのがとても印象的ですね。
キッパリと吹っ切れたのは皮肉にもあのグダグダの行ったり来たりの時間のお蔭なのかもしれないですね。

hitoさん、
帰宅後にググって意味が飲み込めた台詞がいくつもありました。
無国籍とか国境がないとか日本人にはイメージし辛いことですが、
かの地では今もこれが現実なのですね。
>始終暗い顔をしていたモナが、ラスト決然と清清しい顔になったのがとても印象的ですね。
>キッパリと吹っ切れたのは皮肉にもあのグダグダの行ったり来たりの時間のお蔭なのかもしれないですね。
赤十字の女性の努力が思わぬところで実を結んだのかも(笑)。
希望の見えるラストでした。
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