『七つの海を照らす星』

児童養護施設・七海学園の女性教諭と"学園七不思議"。
七河迦南著『七つの海を照らす星』
七つの海を照らす星七つの海を照らす星
七河 迦南
東京創元社 2008-10
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装丁からジュニア向け小説かと思いましたが、
児童養護施設の子どもたちを描いた短編連作集でした。
舌を噛みそうなもちろんペンネームのNANAKAWA KANANは回文。
これもこの作品のキーアイテム。
第十八回鮎川哲也賞受賞作です。

児童養護施設・七海学園。
ここで生活する生徒たちたちの間では
"学園七不思議"と呼ばれる怪異が言い伝えられ、
学園での出来事に不可思議な謎を投げかけていた。


児童養護施設の教諭は1年目は新人、
3年目はベテラン扱いされるのだそうです。
それだけ激務でありまた人の出入りも多いのでしょう。
本作主人公は2年目・中堅教諭の北沢春菜。

肉親との死別や両親の離婚に経済的問題など、
大人の事情に否応無く巻き込まれ、
またDVやネグレストに傷付けられる子どもたち。
かなりハードな内容なのですが何故か読後感に爽やかさが残るのは
作者の(子どもたちやいわゆるマイノリティの立場の)社会的弱者へ
向けられる視線の温かさからだと思います。

生徒たちの間で言い伝えられている"学園七不思議"。
これに絡む事件(というほどでもないですが)が起こり、
それを児童相談所の児童福祉司の海王(かいおう)が
探偵役として解き明かしていく。
全編で基本的なパターンは変らないので
さすがに後半になると少し飽きてきたのですが、
最終話であー、なるほどねぇーと。

ただ個人的には何と言っても第2話。
戸籍がないために学校にも行けず、
12歳までほとんどひとりで生きてきた少女。
彼女の存在を証明するものは出生証明書のみ。

・・・いつまでもこの状態が続くとは思えない。
少女たちが手にした穏やかな生活は綱渡りどころか細い糸の上。
少女たちの今は"滅びの指輪"と共にある。
フィクションですがでも美寿々と優姫。
とにかく幸せに生きて欲しいと祈らずにはいられませんでした。

「あたしは彼女が大好きで、
彼女の昔を引き受けていることはあたしのささやかな誇りでもあったんです。」

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七つの海を照らす星/七河迦南

203.80.26.39七つの海を照らす星/七河 迦南¥1,890Amazon.co.jp【様々な事情から、家庭では暮らせない子どもたちが生活する児童養護施設「七海学園」。ここでは「学園七不思議」と称される怪異が生徒たちの間で言い伝えられ、今でも学園で起きる新たな事件に不可思議な謎を投げかけ

『七つの海を照らす星』七河迦南(東京創元社)

210.165.9.64七海市の南端にある児童養護施設・七海学園に、就職して2年目の保育士・北沢春菜。そんな彼女が担当することになった少女・葉子は問題児。葉子には、かつて学園にいたが、病で亡くなった・玲弥という少女に憑かれているという噂があった。ある夜、葉子と話す機会に恵まれた春菜は、彼女からすでに施設を去ったはずの玲弥が、危機に陥った彼女を助けに現れた話を聞く……第一話 今は亡き星の光も、七海学園で暮らす浅田優姫は18歳。今年度で高校を卒業する真面目な彼女には、行きたい専門学校があり、その為にバイトをし
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