『ジーン・ワルツ』

それは治療なのか神の領域なのか。
彼女はスペシャリストなのか魔女なのか。
海堂尊著『ジーン・ワルツ』
ジーン・ワルツジーン・ワルツ
海堂 尊
新潮社 2008-03
by G-Tools



 前回読んだ「イノセント・ゲリラの祝祭」が
 私的にはあんまりな出来だったので正直どうしようか迷った本です。
 例に依ってサクサクと読み易く・・・そして問題作でした。
 今回のテーマは産婦人科医療。

帝華大学医学部産婦人科学教室の女医・曾根崎理恵は
顕微鏡下人工授精のエキスパート。
彼女は非常勤の医師として勤務する『マリアクリニック』で
事情を抱えた5人の妊婦たちと関わっていく。
一方、曽根崎の同僚の准教授・清川吾郎は
曽根崎が代理母出産に手を染めたとの噂を耳にする・・・。


『マリアクリニック』閉院の理由は
院長の三枝茉莉亜が末期の癌に侵され死期が迫っていることと
北海道極北市の産婦人科医で茉莉亜の息子・久広の事件の煽りから。
事件のモデルとなった福島県立大野病院産科医逮捕事件は
ウィキペディア(⇒こちら)に詳しく載っています。
私たちが思った以上に医師の現場での波紋が大きかったことなどが
かなりのページが割かれていることからも伝わってきます。

ただ、女性としてひっかかったのは
産婦人科医が増えても即出産が増えるわけではないということ。
いくら病気ではないと言っても
妊娠や出産は原則的に健康保険が利かないし、
(出産一時金という制度もありますが)お金がかかります。
そして"産む"の後には"育てる"が続くわけで
現実にはそちらの方が問題が大きくて。
育児休業が終わっても保育所が不足している。
再就職しようにも子どもを見てくれる保育所がないと
面接で落とされる。
保育所への申し込みには現在就労していることが必要。
青井ユミのようなわけにはいかないのですよ。
このあたりのことを海堂さんはご存じないのかな・・・と。

もう一点は・・・荒木浩子の妊娠について。
足掛け5年も『マリアクリニック』で治療していた荒木。
その前は他の病院できっともっと・・・。
荒木夫妻の遺伝子の組み合わせが問題での不妊。
原因が曽根崎の考えどおりだとすれば、
では生まれた子は・・・。
自分たちの子を抱きたいという夫妻の望みを叶えただけと
言いのけた曽根崎。
彼女と強い絆で結ばれている患者たちに対して
医師の裏切り行為であり、
何より人としてのタブーとしか思えないのですが。

ところで曽根崎は桜宮市東城大学医学部出身。
そして妊婦の最高齢で代理母出産をした山咲みどりも。
と辛うじて田口&白鳥ラインに繋がっていくのですが、
こうなると久広医師の事件を扱った「極北クレイマー」が
気になってくるわけで。
えっ?「医学のたまご」の主人公は曽根崎薫
・・・お上手ですね、海堂尊さんは。

そのうちに発生学の講義を聴いていた金田や鈴本も
別の形で登場するのでしょうか。
人物相関図や年表が欲しいです。

「因果律はすべての事象が明らかになったときには
あるべき場所に還っていくものなのね。」
ジーン・ワルツ (新潮文庫)ジーン・ワルツ (新潮文庫)
海堂 尊
新潮社 2010-06-29
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