『ブラックペアン1988』

研修医が白衣に咲かせる『牡丹の花』。
海堂尊著『ブラックペアン1988』
ブラックペアン1988(上) (講談社文庫)ブラックペアン1988(上) (講談社文庫)
海堂 尊
講談社 2009-12-15
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 『ひかりの剣』1988年の物語と知り、
 もしかして・・・と読んでみたら大正解。
 『ナイチンゲールの沈黙』『ジェネラル・ルージュの凱旋』のように、
 これは『ひかりの剣』と連動していました。

1988年。
佐伯教授は外科の権威であり『神の手』を持つと言われる。
その佐伯教授率る東城大学総合外科学教室に
帝華大から困難な食道癌の手術が簡単に行える新兵器を携え
高階講師が赴任した。
一方佐伯外科には腕は立つが曲者の医局員・渡海がいた。


海堂作品の読者には聞き覚えのあるメンバー揃い。
垣谷って誰よ?と思ったら、
『チーム・バチスタ』第一助手のあの垣谷ですし、
高階権太と黒崎誠一郎の因縁はここから。
あの藤原真琴は現役の婦長ですし、
『ジェネラル』で『ハヤブサ』の異名を取った花房美和も
1988年では手術室の機器出しの経験も未だ浅い看護婦。
手術室看護主任の猫田麻里はと言えば
『ジェネラル』のオレンジ病棟のあの猫田師長!
1988年では・・・やっぱりお昼寝していました(苦笑)。

軸になるのは研修医・世良から見た大学病院という社会と
佐伯外科の佐伯教授と招集された高階、
そして有能でありながら何かとワケアリの渡海の物語。

『ひかりの剣』にも出て来た速水・神田・田口の研修話は
世良視線でもっと詳しく。
問題の患者やその家族への告知の件。
・・・渡海の言うことも一理あるのでしょうけれど、
渡海の言うとおりの結果(反応)が100%ということはありえない。
ただこの時のやり取りが医師としても田口の将来に、
少し影響を与えたのかも・・・と思うと、
ちょっと微笑んでしまう部分もありますが。

ところでペアンというのは止血鉗子のことなのだそうですが、
・・・医学には全くの門外漢のド素人は
他の医師なら別の処置が出来たのではないかという気もします。
(もちろんアウト!の可能性も「大」ですが)。
兎にも角にも佐伯教授が執刀したこの手術が
佐伯教授と渡海父子との悲劇の発端になってしまったわけで、
佐伯教授がもう少し何とかフォロー出来ていれば
(例え、渡海が聞く耳を持たなかったということがあるにせよ)、
ここまで拗れなかったように思えます。
・・・もっともだからこそのブラックペアンなのですが。

それにしても『バチスタ』『ジェネラル』と
医療現場最前線の話の方が緊迫感がありテンポもいい。
厚生労働省に対して仰りたいことは多々あるのでしょうが、
やはり海堂センセーにはこちらの路線で書いて頂きたいです。

阿修羅(高階)だの悪魔(渡海)だのに挟まれ、
主役(!)なのに何故か語り手状態だった世良医師。
白衣に牡丹の花を咲かせていた研修医は
どんな形で再登板してくれるでしょうか。

「すぐに追い抜きます。」
ブラックペアン1988(下) (講談社文庫)ブラックペアン1988(下) (講談社文庫)
海堂 尊
講談社 2009-12-15
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ひかりの剣ひかりの剣
海堂 尊
文藝春秋 2008-08-07
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コメント

TBどうもありがとうございました。
すぐに追い抜かれたカレは・・・ぬふふ、お楽しみに、て感じですね〜。

lazyMikiさん、
こちらこそご訪問ありがとうございます。
海堂作品は登場人物があちこちにリンクしますが、
カレは今のところはまだですね。

>・・・ぬふふ、お楽しみに、て感じですね〜。
どんな外科医になっているのでしょうね。
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