『半島へ、ふたたび』

初めて訪れたソウル。
再び訪れた半島。
蓮池薫著『半島へ、ふたたび』
半島へ、ふたたび半島へ、ふたたび
蓮池 薫
新潮社
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蓮池薫さんの経歴は今更言うまでもありません。
これは奥様と一緒にソウルを訪ねた時の紀行文と
帰国後翻訳家としてデビューしたいきさつなどを綴った二部構成。
この翻訳に携わった前後の話は
蓮池さんのブログで読んでいまして、
(第二部はこのブログを加筆修正したもの)
文章の端々からも頭の回転の速い方だというのが伝わる反面、
面食らったのが孔枝泳(コン・ジヨン)さんへの思い入れの強さ。
彼女の人間性から来るものなのか、
作品の魅力なのか作品を翻訳したご縁からなのか、
単にウマが合うからなのかは今回もわかりませんでしたが。

2008年10月、
ソウル行きの機上の窓から朝鮮半島を見た筆者に
24年前の悪夢のような出来事と
自由を奪われた歳月の記憶が蘇る。
そして筆者が見て触れた"南"の首都ソウルは・・・"


拉致問題に関しての政治的な内容を期待すると
肩透かしを食らいます。
日本と韓国、南北を比較した・・・一味違う旅行ガイド。
ただ・・・私なら現実問題何年経っても"かの国"には近付きたくない。
蓮池さんと奥様の他に新潮社のスタッフら総勢七人の大所帯。
・・・本文中では特に触れられてはいませんでしたが、
多分SPさんも付いていたのだと思います。

反米感情を持つ若い人が少なくない反面、
留学、就労などでのアメリカの人気が断然高いこと。
ビザの申請先である在韓アメリカ大使館は
数十台の警察車両と数百人の戦闘警察(機動隊)に守られ、
コンクリート塀に囲まれている。
アメリカ大使館は時として反米デモや抗議活動の標的になる。
・・・韓国にとって良くも悪くも大きいアメリカの存在。

旧正月に紙幣を新札に交換するための"出張バンク"や
広場にテントを張り温かい飲み物を提供するボイラー会社。
どちらも無料です。
奉仕・・・というより宣伝効果を狙ってのことなのでしょうね。
またハングルを勉強しておられる方には常識なのでしょうけれど、
出来るだけ英語の発音に近づける韓国と
出来るだけ日本人が発音しやすいようにする日本。
外来語の取り入れ方ひとつでもお国柄がわかります。

子どもに送られる銀粧刀という懐刀や、
朝鮮戦争勃発一週間前に撮られた写真。
南北で異なる風習や解釈の違いに驚いたり、
またやはり同じ民族なんだと感じたり。
"尋常ではない人生"に"まだ生涯の伴侶に出会っていない"。
占いは"当たるも八卦当たらずも八卦"・・・と言っても
笑っていられないでしょうね、当事者としては(苦笑)。
この"占い"や"風水"は北にもあるそうです。
もちろん非公式にですが。

90年代末頃の冬に暖房の燃料として
家族総出でアカマツの枝を集めたこと。
冬の食糧事情を左右する家族四人分、
白菜と大根を合わせて1トンのキムチ作り。
北での生活の思い出話として挿入されるエピソードは
軽いタッチの文章とは裏腹の厳しさが伝わってきます。

"波瀾万丈"や"数奇"という言葉そのものの経験をした蓮池さん。
そしてこれは帰国を果たした他の被害者や
お子様たちにとっても同じだと思います。
5人の拉致被害者の"一時帰国"が実現したのは2002年です。
私たちの幸せな時間私たちの幸せな時間
孔 枝泳
新潮社
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半島へ、ふたたび (新潮文庫)半島へ、ふたたび (新潮文庫)
蓮池 薫
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