『さすらいの舞姫』

激動の時代を駆け抜けたバレリーナの数奇な人生。
西木正明著『さすらいの舞姫 北の闇に消えた伝説のバレリーナ・崔承喜』
さすらいの舞姫 北の闇に消えた伝説のバレリーナ・崔承喜さすらいの舞姫 北の闇に消えた伝説のバレリーナ・崔承喜
西木 正明
光文社 2010-07-17
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「小説宝石」で連載された『哀愁の舞姫』を加筆修正して
このタイトルになったそうですが"さすらいの舞姫"って・・・。
彼女はあてもなく彷徨っていたわけではないのですが。

1970年代初め、週刊誌の編集者だった「わたし」は、
川端康成を取材した時の会話から
戦前に日本で活躍した崔承喜というバレリーナの存在を知る。
その後物書きとなり二十年余り、
偶然若き日の川端康成が書いたエッセイの中で
崔承喜が手放しで礼賛されていることを知った「わたし」は
彼女にあらためて興味を持つ。


1920〜1940年代半ばに日本で活躍した崔承喜(チェ・スンヒ)。
当時は"さいしょうき"と呼ばれた女性を描いた小説です。

美貌とバレリーナとしての才能、
そして社会主義者である夫の献身的なマネージメントを受け
国内外で評価され人気を博す彼女。
ただアメリカ公演が実はアメリカの思惑だったりと
政治に翻弄されてしまうのが仕方がないことなのかもしれません。
彼女自身も戦時下で踊り続けるために
日本軍の前線慰問に出ていたのですが。

第二次大戦前後の知識がそれほどないことと、
モダンダンスなるものを観たことがないこと、
そしてマルキシズムやコミンテルンなど聞き慣れない言葉の数々。
本編だけで901ページとボリュームがあることもありますが、
正直読み辛かったです。
実在の人物がモデルとはいえどこまでがフィクションなのか、
特に北朝鮮や中国での出来事や人間関係は見当がつきません。
ただ愛娘・安聖姫(アン・ソンキ)の生死が不明で
不安定な精神状態だったとはいえ、
中国での承喜はあまりに迂闊。
・・・もっとも小説の体を執っているのですから
フィクションの部分もかなりあると思いますが。

承喜と石井の義妹の小浪との間では
手紙のやり取りはなかったんでしょうか。
石井の目の状態や日本に置いてきた荷物についてなど、
バレリーナとしてだけではなく、
ごく普通の女性としての承喜の人となりが
もっと描かれていたらと感じます。

川康康成、菊池寛、ロマン・ロランにガーシュイン。
彼女が出会った人々は今も評価され続ける中で
夫に続いてふたりの子とともに金日成に粛清され、
人々の記憶からも消し去られてしまった崔承喜。

「金日成将軍など、わたしの芸術を正当に評価してくれる人々がいる
平城に行きましょう。」

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