『乙女の密告』

乙女、アンネ・フランク、スピーチ、密告。
赤染晶子著『乙女の密告』
乙女の密告乙女の密告
赤染 晶子
新潮社 2010-07
by G-Tools



第143回芥川賞受賞作。

京都の外国語大学。
ドイツ語学科の女学生たちは
『アンネの日記』を教材にスピーチ・ゼミで学び、
バッハマン教授に"乙女"と呼ばれている。
迫るスピーチコンテストに向けて"乙女"たちは
『1944年4月9日、日曜日の夜』の暗記に励んでいる。
ゼミの"乙女"のひとり・みか子はどうしても
スピーチの途中で同じところで詰まってしまう・・・。


女子大の"乙女"とは違うというエリート意識に
"すみれ組"と"黒ばら組"、"麗子様""百合子様"。
今どきの高校生もここまで幼くないと思うんですが。
挙句に"敵ながらあっぱれ"って・・・ほとんど喜劇。
第一、花やいちごの名ならともかく
正面きって"乙女"と連呼されるとこちらが気恥ずかしい。

外に出ることの許されない状況下での暮らしや戦況、
母との衝突や周囲の大人たちへの鋭い観察眼と批判精神。
そしてペーターとの恋を綴っているのが
おぼろげな記憶の中の『アンネの日記』なのだけれど、
ここに登場する『ヘトアハテルハイス』はかなり違う。

ユダヤ人だからこそナチス・ドイツに迫害される。
ユダヤ人だからこそ隠れ家に潜んで暮らしている。
そこにあるのはアンネのユダヤ人としてのアイデンティティ。

約2年、8人での隠れ家での生活は誰か
(これもおぼろげながら密告者は
隠れ家の表だか裏だかの倉庫で働く男と思っていましたが、
誰なのか判らないというのが今の定説らしい)の密告で
住人たちはゲシュタポに逮捕される。
アンネの父オットー・フランクを除いて全員が
強制収容所の中で亡くなったのですが、
小説は彼らのその後からは離れ全く違う方に向いていく。

みか子を"密告"した人もチラシに落書きした人も判らない。
密告に脅え追い詰められていく・・・と言っても
文字通り生きるか死ぬかの状況のアンネと重ねるのは強引過ぎる。

どうしてそれが"一番大事な言葉"なのか"一生の宝物なのか"、
肝心なところが何度読み返しても判らず仕舞いでした。
私には到底読み取れない部分があるんでしょう。
何だかすっきりしない読後感です。

「わたしは密告します。
アンネ・フランクを密告します。」

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