『Dの複合』

取材作での不可解な出来事と消えた編集者と数字の謎。
松本清張著『Dの複合』
Dの複合 (新潮文庫)Dの複合 (新潮文庫)
松本 清張
新潮社 1973-12
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 1965年から1968年にかけて連載された小説です。
 
売れない作家・伊瀬忠隆は、
雑誌「月刊 草枕」の依頼を受け、
「僻地に伝説をさぐる旅」の連載を始めた。
編集員の浜中と浦島太郎伝説を取材するために
丹後半島を訪れて以来、
伊勢の行く先々で不可解な謎や奇怪な事件が発生した。
そのことに伊勢が不審を抱き始めた頃、
突然連載が打ち切られ・・・。


若い頃から考古学、民俗学、古代史に傾注した松本清張。
伝説をさぐる・・・の言葉のまま
前半部は古代史や民族伝承の引用がかなり多い。
・・・正直興味も知識もない私にはひたすらつまらなく感じました。
ただ、伊勢がそれまでの出来事を調べ始めたあたりから、
話は急に面白みを増していきます。

ところでタイトル。
北緯35度、東経135度は
North Latitude 35 degrees、
East Longitude 135 degrees。
4つの「D」が重なり合っていることにからだそうです。
それに緯度と経度は地球をタテとヨコに割っているから、
その形からも「D」形の組み合わせ=「Dの複合」になるそうで、
こういう発想や着眼点を持ち合わせない私には
マジックのようでした。
・・・もっとも後で冷静になって考えて見れば、
別に35135でなくとも「D」になるのですが。

後半は犯人に依って過去から現在までの出来事や
登場人物の人間関係や役割を解説風にまとめながら
順序立てて解き明かされています。
発端となった事件でのふたりの被害者も
その遺族もあまりに気の毒。
その復讐心には同情する部分もあります。
そして計算狂として登場する坂口まみ子。
本文を読む限りでは彼女は精神科の病気ではなく
知的なハンディキャップを持つ女性に感じました。
彼女は全くの偶然で事件の巻き添えになってしまいましたが。

半世紀前が舞台ですからあちこちに"古さ"を感じますが、
でも推理小説としても人間ドラマとしても読み応えがありました。

"三五の数字の秘密はこれだったのか。
東経一三五度、北緯三五度のことだったのか。"
松本清張の世界 (文春文庫)松本清張の世界 (文春文庫)
文芸春秋
文藝春秋 2003-03
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