『四十九日のレシピ』

二週間前に七十一歳で亡くなった妻・・・そして母。
遺された夫は・・・娘は。
伊吹有喜著『四十九日のレシピ』
四十九日のレシピ
伊吹有喜
ポプラ社 2010-02-16
by G-Tools



父の一周忌法要の準備でググっていたところ
引っかかった本です(苦笑)。
元々"レシピ"は"処方箋"という意味だったそうで。

熱田乙美が七十一歳で亡くなって二週間。
気力を失った夫・良平の元を真っ黒に日焼けし黄色い髪、
目の周りを銀色で縁取った女の子・井本が訪れる。
乙美の教え子だったという彼女に、
乙美から生前に頼まれて四十九日までの間、
家事などを請け負うと言われ面食らう良平の前に
東京に嫁いでいるひとり娘・百合子が現れる。


昨年、父が急逝しました。
告別式に葬儀と何と慌しかったことか。
それでも帰宅するとひょいと父が顔を出すような気がして。
戸籍や印鑑登録の抹消にライフラインの名義変更、
預貯金の解約や年金の手続きをしながらも、
それでも父を喪ったという実感がありませんでした。
健康そのものの妻を亡くした良平が
"もう少しこうすれば良かった、こう言えば良かった"と悔やむのは
無理ないことと思います。

そして私は子どもがいませんので、
百合子の気持ちも立場も良く解ります。
悪意はないとは言いながらも無神経な言葉は堪えます。
世間の大半の人が思っている事。
でもそう出来ないこともあるのに・・・。

百合子の夫の浩之は本当に身勝手でまた優柔不断なのですが、
体が不自由になっても車椅子を嫌がり床を這う母と
百合子が飼い出したペットの亀。
親の老いに直面したことでの神経が過敏になっている浩之。
子どもに恵まれないことで自分が責められているように感じる浩之が
亜由美との家族ごっこで初めて気付いたこと。

料理や口のきき方、服の畳み方、洗濯、買い物と
乙美に教わったリボンハウスの少女たち。
工場に出稼ぎに来ている日系ブラジル人たちとの交流。
跳び箱の踏み切り板・・・テイクオフ・ボード。
思い切り走って、板を踏み切って跳び箱を飛び越えたら、
テイクオフ・ボードのことはもう思い出さなくていい。
・・・乙美の親友・聡美の言葉は正直ちょっと寂しい気もしますが、
でもこういう考え方、生き方もあるのですね。

元々四十九日は遺族の別れの悲しみが癒され、
落ち着いて亡くなった人の死と向き合える期間。
突然妻を喪った良平。
乙母さんの声が聞きたいと泣く百合子。
テイクオフ・ボード役を務める乙美と関わっていた井本とハルミ。
リボンハウスのリボンは『ribbon』ではなく『reborn』。
再生・・・生まれ変わった・・・。

四十九日の大宴会はともかく、
七日参りの場面が出てこないのが不思議なのですが、
家族を愛し思いやること、血の繋がりだけではない人との繋がり。
何とも温かく優しい物語でした。
2011年2月、和久井映見主演でNHKでのドラマ化が決定しています。
他に伊東四朗、風吹ジュン、徳永えり、渡部豪太など。

乙母さんのコロッケサンド、食べてみたい。

「でもやり方によっては、
私もまた誰かのテイクオフ・ボードになれるようなんです。
生きている、生活をする。
気にかけることがあり、気にかけてくれる人がいる。
それだけで人は誰かを飛ばし、飛ばしてもらい、
一緒に前に進んでいる気がします。
それは無数のテイクオフ・ボード、お互いさまだから・・・。」

コメント

Secret

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

「四十九日のレシピ」伊吹有喜

208.71.105.244伊吹有喜「四十九日のレシピ」を読みました。乙美が71歳で亡くなり、残された夫は、気力を失っていました。前妻の娘である百合子は、夫と離婚寸前。そこに、乙美の教え子だったという、金髪で真っ黒に...

「四十九日のレシピ」 伊吹 有喜

121.119.173.209掃除された部屋に入るきれいな空気と光。そんな読後感の「四十九日のレシピ」。けれど、前半は掃除をする前の汚い部屋のように人間関係がドロドロです。(・_・;)継母の乙美さんが亡くなり、生きる気力を無くした父・良平と、夫を奪われてしまった娘・百合子さん。そんな時、家に現れたのは今では珍しいガングロメイクの女の子・イモだった。イモは乙美さんが教えていた絵手紙教室の生徒で、自分の四十九日の大宴会と、それまでの作業を依頼されてきたのだという。最初はノリ気がしなかった良平と百合子だったが、
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

フリーエリア