『あんじゅう 三島屋変調百物語事続』

江戸・神田三島町の袋物屋の三島屋には
一夜限りの不思議を語る部屋がある。
宮部みゆき著『あんじゅう 三島屋変調百物語事続』
あんじゅう 三島屋変調百物語事続あんじゅう 三島屋変調百物語事続
宮部 みゆき
中央公論新社 2010-07
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『小暮写眞館』より先にこちらを読んでいたのですが、
レビューが前後してしまいました。

江戸・神田三島町の袋物屋・三島屋では
珍しい一話限りの『変わり百物語』を募っていた。
聞き手は三島屋の主人・伊兵衛の姪で17歳のおちか。
着替えを済ませたおちかが客人を迎える座敷を覗くと
大店の番頭らしき男とそのお供の丁稚が一緒に並んで座っていた。
(第一話『逃げ水』)


第一話『逃げ水』、第二話『藪から千本』、
表題作である第三話『暗獣(あんじゅう)』、
第四話『吼える仏』。
2009年1月1日から2010年1月31日まで読売新聞朝刊で連載された本作は
『おそろし』の続編になるのですが、
・・・全体のタッチがかなり違います。
主人公おちかに一体何があったのかを
不思議な話・・・『変わり百物語』に重ね合わせた前作。
そのいきさつは序章の5ページでさっさと説明されるので、
前作を知らなくても問題なく読めると思います。
怪談話であり人情話である四編は、
大雑把に言えば『逃げ水』『暗獣』、
『藪から千本』『吠える仏』に分かれるのだと思いますが、
今回のおちかは語られる『変わり百物語』に対しては
完全に狂言回しの役どころ。
おちかの叔母であるお民が前に出てきていますし、
新登場のキャラクターも多数。
各ページにある南伸坊の挿絵も効いています。

私が好きなのは『暗獣』。
隠居した加登新左衛門が妻と移り住んだ紫陽花屋敷に住む(?)
得体の知れないもの・・・"暗獣"に"くろすけ"と名前を付け、
接していくうちに人嫌いの新左衛門が変っていく。
でも夫婦はこの屋敷を離れることにする。
"くろすけ"のために・・・。

この"くろすけ"がもう可愛くて、
愛おしくて不憫で切なすぎるおかげで(?)、
もう一方の主人公である直太郎の影が薄くなってしまう始末。
(私は直太郎の実家の火事は
養子先の八百屋のせいではとずっと疑っていたのですが。)

"くろすけ"の歌、聞いてみたいわぁ ♪〜♪〜

・・・ただ、この時代の子どもたち。
直太郎に三島屋の丁稚の新太、
『逃げ水』の染松(平太)にいたずら坊主三人組。
貧しさや悲しみの中で本当に一生懸命に生きている。
もちろん大人たち、
お旱(ひで)りさんに掌を返した『逃げ水』の村人たちも
『藪から千本』の二組の夫婦も
『吠える仏』の館然の村人たちも彼らなりに賢明に生きている。
ただ・・・そこに欲が絡んでくるとそれが心の闇を産む。
金井屋を金貸しと卑しむおちかの心にも潜んでいる・・・。

変わり百物語の二番手の語り手・おたかと、
その弟(のような存在の)越後屋の若旦那・清太郎も再登場。
おちかといい感じになるのかと思いきや、
おちかの気持ちは・・・違うのかしら。

途中で"躑躅"が読めなくなって、
筋に無関係に戻る羽目になりましたが(ちなみに"つつじ")、
何にせよ『百』まではまだまだ遠い。
次回作をお待ちしております。

―人だ。
―わぁ、人が来た。
―ここに住んでくれる人が来た。
おそろし 三島屋変調百物語事始おそろし 三島屋変調百物語事始
宮部 みゆき
角川グループパブリッシング 2008-07-30
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