『魔王』

電車での再会。
宮沢賢治の詩集。
スイカの種の並び。
伊坂幸太郎著『魔王』
魔王 (講談社文庫)魔王 (講談社文庫)
伊坂 幸太郎
講談社 2008-09-12
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とうとう伊坂作品デビューでございます。
何せ最初なので短めのものを・・・と手に取ったんですが・・・

「俺」こと安藤は早くに両親を亡くし、
弟の潤也と暮らす普通の会社員。
最近は弟の彼女・詩織も同居、互いに仲良く生活している。
ある日、安藤は自分に特殊な能力があることに気付く。
それは他人に自分の思い通りの言葉を
一言二言くらい発言させること。
安藤は『腹話術』と呼ぶが、
息苦しくなるなど負担が大きいこともわかってきた。、
その頃若い政治家・犬養が強気で断言的な口ぶりや態度で
大衆の支持を集め始めていた。
安藤は犬養の記事やニュースを眼にする度に、
彼の強烈な思想にファシズムの影を感じ不安を抱いていく。
(「魔王」)


「魔王」は不思議な力を身につけた安藤の視点。
そして後半部「呼吸」は「魔王」の5年後。
安藤の弟・潤也の妻(「魔王」では恋人)の詩織の視点から、
・・・率直なところ怖かったです。

不思議な能力を身に着けた安藤(苗字のみ)と
攻撃的で強気な口調で人気を集める政治家の犬養。
そしていつの間にか犬養に熱狂する大衆。
マスコミはその流れに乗り大衆はまたそれに乗り・・・
波は大きくなっていく。
安藤兄が感じる得体の知れない悪意と危機感。

犬養の言葉に扇動されたようにアンダーソンの家は炎に包まれる。
犬養が口にした宮沢賢治の詩集が読まれるようになる。
サッカー選手が刺殺される事件が起きる。

「考えろ、考えろ、マクガイバー。」
安藤兄を見つめる「ドゥーチェ」のマスターがいる。
そして犬養の演説会。

第二部「呼吸」では安藤は亡くなっており、
詩織は潤也と結婚後仙台に住んでいる。
詩織は派遣社員として事務を、
潤也は猛禽類の定点観測の仕事に就いている。

「魔王」と全く別人のような潤也は
兄とは違う能力を発揮し始める。
義兄を慕い潤也を見つめる詩織。

前半でのひたひたと足元に迫ってくるような、
いつの間にか身体を覆っているような
冷たく湿った恐怖感はないけれど。
でもここでも安藤兄の大学時代友人・島が現れる。
今や首相になった犬養は・・・。

潤也の決意。
詩織の決意。

得体の知れない怖さがどこから来るのか・・・、
何かが起こりそう・・・という不安からなのかよく解らないけれど
怖さに包まれたままで終わった小説でした。

"再び"対決する物語は潤也の言葉で語られるのでしょうか。

「潤也みたいに弱音を吐くほうが強いと思うんだ。
へらへらしているようで、実は強い。
何かやるとしたら、俺じゃなくて、潤也だよ。」
「そうすりゃ、世界が変わる。
兄貴がそう言っていた。」

コメント

こんばんは。
おお、初伊坂作品でしたか。
伊坂作品を読まれる場合には、なるべく刊行順に、とオススメしているんですが、
何故、これを選ばれたのかと思ったら、長さでしたか。
この作品は、途切れない緊迫感が付き纏った上に、すっきりしない閉じ方なので不思議な感じで終わったことでしょう。
伊坂作品には、別作品との登場人物や事件などのリンクがあるのですが、もし『死神の精度』を先に読まれていたら、
この作品のある場所で絶望的な気持ちになったりするんです。
さらに、直接的ではないけど、このうんと先での続編とも言うべき作品もあります。
『ゴールデンスランバー』は、それまでのたくさんの作品で描かれたテーマの集大成とも言うべき作品だったので、
『魔王』と似た雰囲気を感じられたのも当然かとも思います。
軽やかな会話、印象的な台詞、重層的な比喩で語られるテーマ、
伊坂作品には魅力が溢れています。

悠雅さん、
>何故、これを選ばれたのかと思ったら、長さでしたか。
とにかくたくさんあるのでどれから読もうかと悩んだ末に
一番薄いものを(^_^;
途中からずっと怖さ・・・不気味さがありました。
ただ、この後、「ゴールデン・スランバー」とあと2冊読みまして、
「魔王」はちょっと特別な小説だったのかな?という気もしています。
「ゴールデン・スランバー」は来週アップ予定ですので
その時はまた伺わせて頂きます。
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魔王

203.131.194.84考えろ考えろ、マクガイバー 伊坂幸太郎 著 講談社 

『魔王』/伊坂幸太郎 ◎

133.205.94.4このまま、流されるまま、ファシズムに染まるのではないか。力強く大衆を惹きつけ、自らの描くレールに乗せ、コントロールしようとする力。それに気付き、対抗しようとする主人公・安藤。安藤には、とある能力が発現しているのだが・・・。私、今年は伊坂幸太郎作品の年になりそうな予感がします。伊坂さん、本屋大賞とりましたしね!読んでいきますよ??!
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