『魔術はささやく』

スクラップブックに並んだ三人の女性の死亡記事。
サブリミナル広告。
父の結婚指輪。
宮部みゆき著『魔術はささやく』
魔術はささやく (宮部みゆきアーリーコレクション)魔術はささやく (宮部みゆきアーリーコレクション)
宮部 みゆき
新潮社 2008-01
by G-Tools



実は出かけるつもりでいたのですが、
強い雨と風に億劫になりまして(=^^ゞ

一週間後に挙式を控えた二十四歳の女性が
自宅マンションの屋上から飛び降りた。
二十歳の女性が地下鉄に飛び込んだ。
そして女子大生がタクシーにはねられた。
社会面のありふれた記事である彼女たちの死は
仕組まれたものであり魔の手は四人目に伸びていた。
逮捕されたタクシー運転手の甥・日下守は
信号は青で女性がいきなり飛び出してきたという伯父の言葉に
被害者の女子大生の部屋の前に立った。


主人公・日下守が幼い時に
公務員の父が公金横領の事件を起こして失踪、
母も三十八歳で脳血栓で急死後、
東京の伯母夫婦の家に引き取られている。
高校ではそれが原因となって嫌がらせを受けている。
交通事故の加害者の家族になった浅野家への悪意・中傷が加わる。
アルバイト先のスーパーでは事件が起こる。
部活動の部費を盗んだ疑いをかけられる。
・・・相当キツイ状況です。

ミステリーであると同時に、
というかそれ以上に守の成長の物語です。
そしてサブリミナルと催眠術をツールにしているように、
もうひとつのテーマは"意識"だと思います。
ある人物が何度か"不公平だ"と呟きます。
没落した生家を再興することを考えていた彼にとって、
自分の事故と入院、金銭的な理由での中退、
不本意な就職を強いられたこと。
確かに不運だしまた"不公平"に思えるのはわかります。
でも故意ではないにせよ彼(と彼の母)によって、
守の人生に大きな影響を受けてしまった。
・・・守の父の横領の事実は変わらなくとも、
日下家の"その後"は全く違うものだったはず。
彼の日下母子に向けられた"愛"は身勝手な一方的な感情。
でもこの一種の優越感から生まれる無意識・無自覚の上の"意識"、
身勝手さは4人の女性たちや三浦たち、
ある意味では原沢老人も共通しているもの。
一方で彼らの対極ともいえる存在が
浅野家の人々でありあねごこと時田沙織や宮下陽一であり、
体育教師であり高野をはじめとするバイト先の大人たち。
この周囲の人々の理解に支えられて
伯父の事件の謎を追う内に思いがけない事件に遭遇することになる。
何より思いがけず父の失踪の理由を知ることになる。

事件の目撃者から当事者に・・・裁く側に。

エコバックという概念はまだないので(苦笑)、
スーパーの買い物袋はポリ・・・ではなく紙袋(!)
待ち合わせはマリオン。
・・・古さは感じるけれど、
十何年ぶりかの再々々々・・・読でも読後感の温かさは変わらない。

「人間ってやつには二種類あってな。
一つは、できることでも、そうしたくないと思ったらしない人間。
もう一つは、できないことでも、
したいと思ったらなんとしてでもやりとげてしまう人間。
どっちがよくて、どっちが悪いとは決められない。
悪いのは、自分の意思でやったりやらなかったりしたことに、
言い訳を見つけることだ。」
(普及版)(英文版) 魔術はささやく - The Devil's Whisper(普及版)(英文版) 魔術はささやく - The Devil's Whisper
Miyuki・Miyabe Deborah・Stuhr・Iwabuchi
講談社インターナショナル 2009-11-11
by G-Tools

コメント

Secret

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

宮部みゆき「魔術はささやく」

210.165.9.64読み終わって「面白かった〜」思わず声が出ましたジャンル分けすれば推理小説なのでしょうが、むしろ人間を描いた小説として秀逸だと思います物語の中盤で一応事件は解決、この先何が起こるのだろうか終盤で見事収束するか、と思わせながら、やはり最後の最後まで何が起こ...
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

フリーエリア