『龍は眠る』

子供用の黄色い傘。
白紙の手紙。
超常能力者の少年ふたり。
宮部みゆき著『龍は眠る』
龍は眠る (新潮文庫)龍は眠る (新潮文庫)
宮部 みゆき
新潮社 1995-01
by G-Tools


 これもずいぶん前の作品です。
 KDDにワープロ(苦笑)。

台風の暴風雨が荒れ狂う夜、
新聞社系の「週刊アロー」の記者・高坂昭吾は
車で東京に戻る道すがら、
道端で自転車をパンクさせ立ち往生していた少年を
車に迎え入れた。
びしょぬれの少年・稲村慎司を助手席に
再び走り出した高坂が見たのは、
路上のマンホールの蓋がずらされ
大量の雨水が流れ込んでいる光景だった。
その道路脇の草むらの中を開いたままの子供用の黄色い傘が
転がっていった。
不吉な予感に捕らわれた高坂に長身の男が近付いて来た。
このあたりで、小さい子供を見かけなかったかと。


第一章『遭遇』、第二章『波紋』、第三章『過去』、第四章『予兆』、
第五章『暗転』、第六章『事件』『エピローグ』からなる小説です。

第一章は高坂昭吾と稲村慎司のというよりは
高坂と超常能力者(サイキック)の遭遇。
半信半疑でマンホール事件を追う高坂の姿とマンホール事件の真相。
かなりのページが割かれたこの第一章。
でも"人の心や物からその残留思念を読み取れる"と聞いて、
"はい、そうですか"と受け入れられる人がどれくらいいるでしょうか。

マンホール事件が苦い決着で終わった(に思われる)ところで、
高坂の同僚の生駒悟郎、アルバイトの水野佳奈子、
声を失くした三村七恵と本格的に絡んでくる。
高坂が「週刊アロー」編集部に異動することになった過去の"事件"と
もうひとりのサイキック・織田直也。

ハンディキャップを持っている自分が部屋を借りることは大変だと、
嫌がる大家さんが多いと七恵に聞いて高坂が驚く場面があります。
七恵に聴力がないだけの理由で嫌われる。
稲村慎司には同じ力を持った大叔母の手助けがあり、
両親の支えがある。
でも織田直也にはそれがない。
望まない力を持ち苦しむ直也にとっては
七恵は恋愛感情云々というより、
姉(や母)のような安らげる存在だったんでしょうねぇ。
だからこそあえて親しくなりすぎないようにしていたのでしょう。
言葉に出されなくても態度に表われなくても
サイキックの彼には聞こえてしまう"本当の本音"。
その人の心の裏表が見えてしまう苦しさ。
・・・誰も信じられない、心を開けない。

ふたりのサイキックの少年たちの戦いと
高坂が巻き込まれた誘拐事件の顛末。
悲しい結末と未来の予感。
何度も読み返した小説なのに読み応えもあり余韻も残ります。

「僕も、好きでこんなふうに生まれてきたわけじゃないんだ。
十分でもどうしようもないんだ。
見えるし、聞こえるから、どうにかしなくっちゃと思うんだ。」
「全部一人でしょって立つ気構えがないんだったら、
他人の身におこることに関わっちゃいけないってさ。」
日本推理作家協会賞受賞作全集〈67〉龍は眠る (双葉文庫)日本推理作家協会賞受賞作全集〈67〉龍は眠る (双葉文庫)
宮部 みゆき
双葉社 2006-06
by G-Tools

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