「瞳の奥の秘密」(スペイン/アルゼンチン 2009年)

25年の歳月。
情熱。
『A』。
瞳の奥の秘密 [DVD]瞳の奥の秘密 [DVD]
リカルド・ダリン ソレダ・ビジャミル
東宝 2011-02-18
by G-Tools



 北海道では2010年9月シアターキノで公開されていました。
 DVDにて。

刑事裁判所を定年退職したベンハミン・エスポルトは
25年前の殺人事件を題材に小説を書こうと思い立ち、
久しぶりに当時の職場を訪ねる
彼を迎えたイレーネ・ヘイスティングは
かつての判事補であり元上司。
現在は検事に昇格した彼女は今も美しく聡明で
私生活ではふたりの子供の母親だった。

1974年。
銀行員と新婚生活を送っていたリリアナは自宅で殺害された。
現場に到着したベンハミンは無残な遺体に衝撃を受ける。
やがて、捜査線上にリリアナの幼馴染みの男が浮上。
ベンハミンは部下のパブロ・サンドバルと男の居場所を捜索するが
判事の指示を無視したことが問題になり、
事件は未解決のまま葬られてしまう。
一年が経った頃ベンハミンは駅で
偶然リリアナの夫リカルド・モラレスと再会する。
彼は毎日曜日ごとに駅を変え容疑者が現れるのを待ち続けていた。


この映画の舞台のひとつである刑事裁判所。
現在検事のイレーネが籍を置いているように、
アルゼンチンの司法制度は当然(?)日本とは違うらしい。

リリアナの事件の2年後の1976年に
アルゼンチンではクーデターで軍事政権が発足、
国民は弾圧され3万人以上が犠牲になったそうです。
終身刑を言い渡されたイシドロが釈放されてしまったのは
そんな政情不安の真っ只中での混乱に乗じてのことなのでしょう。

ただ、被害者遺族にとってはこんな理不尽なことは無い。
正当に執行されていればモラレスは
例えリリアナの死を悼み続けていても
新たな愛を見つけていたかもしれない。
別の人生を歩んでいたかもしれない。
でもそうはならなかった。
もしかするとイシドロはモラレスが誰で
自分が何故こうしているのかさえわかっていないのかもしれない。
"自分を(ここから)出してくれるように"ではなく、
"話しかけてくれるように言ってくれ"という言葉は
何よりも衝撃的でした。
ただ空虚さの中で生きていく・・・モラレスが望んだように。

もっともリリアナの事件とその後に続く出来事は
ベンハミンの書くフィクションという設定。
リリアナのアルバムの写真からイシドロに目を付けたと書けば、
ちょっと出来過ぎだとイレーネに言われ、
駅での別れのシーンでも当事者からクレームが(苦笑)。
でも多くの事件に接してきたベンハミンの小説の題材が
なぜこの事件なのか、
この事件でなければならないのか。
パブロの悲劇と実らなかった愛。
だからこそベンハミンは25年前の事件に拘った。

パブロの死の真相は多分ベンハミンの想像どおり。
ただイレーネとの愛は・・・自分から踏み出すこともなく、
ベンハミン任せの彼女がちょっとズルイと言うか
(意気地なしって言われてもねぇ・・・)、
正直共感し辛づらいものがありました。

とは言え"瞳の奥に見える思い"と"情熱"と"執念"。
重厚感があるヒューマンドラマでした。

「僕のすべてがここにある!」
「・・・終身刑ですよね。」
The Secret in Their Eyes (El Secreto de Sus Ojos)The Secret in Their Eyes (El Secreto de Sus Ojos)
Ricardo Darín Soledad Villamil
Sony Pictures Classics 2010
by G-Tools

コメント

コメントを戴きながら、お邪魔するのが遅れました!
コチラはどうも主人公たる二人に魅力を感じることが出来ず、
ラブの部分は全くピンと来なかったのです(^^ゞ
が、
仰るとおり、アルゼンチンの政情不安の中、
執念の復習を遂げる被害者の夫にこそ、同情を禁じえませんでした。
男はキレが悪いし(笑)女は可愛くないし(ゴメン)
どうも私的にはちょっとセリフがつまらなくて、皆さんほどには入り込めなかったデス〜(^^;

kiraさん、
こちらこそお返事が送れて申し訳ありません(-。-;
TBがダブってしまい重ねて申し訳ありませんm(_ _)m
>男はキレが悪いし(笑)女は可愛くないし(ゴメン)
まあ、一方は万年ヒラで一方は超エリート。
ベンハミンが引け目を感じてしまうというのはわからなくはないですが、
イレーネも婚約を解消させようなんて気持ちもサラサラですし。
・・・何だかねぇ。
被害者夫の情熱と対比させるための主人公の恋バナ?
・・・メインはどっちなんだか(苦笑)。
Secret

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