『アイスクリン強し』

明治二十三年東京。
匿名の手紙。
元士族の若者たち。
畠中恵著『アイスクリン強し』
アイスクリン強し (講談社文庫)アイスクリン強し (講談社文庫)
畠中 恵
講談社
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畠中恵作品を読むのは初めてです。

明治二十三年。
築地の居留地近くの西洋菓子屋『風琴屋(ふうきんや)』。
店主のミナこと皆川真次郎は父を亡くした後、
通詞だった父の仕事先の宣教師夫妻の家などでお端仕事などをして育った。
その『風琴屋』を長瀬・福田・園山の三人の若い巡査が訪れる。
巡査たちは士族の生まれでそれぞれに旗本の跡取りだったが、
御維新で禄を失った今では仇敵の明治政府に使われる身になっている。
彼らはわずかな皮肉も込めて自分たちを"若様組"と称している。
この日巡査たちは"若様組"全員の元に今朝方届いた手紙を
真次郎に見せに来たのだ。
"若い御仁方へ"という宛先で書かれた手紙は
達筆で文章もしっかりしているが内容は首を傾げたくなるもの。
彼らは真次郎のところにも届いていないかと確かめに来たのだ。
そして・・・


『序』『チョコレイト甘し』『シュウクリーム危うし』
『アイスクリン強し』『ゼリケーキ儚し』『ワッフルス熱し』の
短編からなる小説です。
どういうわけかミステリーだと思い込んで読み始めたのですが(^_^;
『序』は文字通りのプロローグで、
ミナこと皆川真次郎と旧幕臣の子息・長瀬ら"若様組"の紹介。
そして本編。
タイトルからお菓子が中心に話が進むと思っていたのですが、
完全に小道具的な扱い。
真次郎、"若様組"と成金の娘・小泉沙羅の青春群像劇です。
結婚記念ぱあていパーティーの桃のクリームケーキは、
ワッフルの記事で作った薄いスポンジにクリームと缶詰の桃を挟む。
ここでのワッフルはむしろクレープに近いのかな?

『序』にかぎらず随所で明治になってからの出来事、
背景が語られていきます。
文明開化を謳歌するような銀座や外国人の居留地の豊かさと、
時代に取り残された貧民窟の人々の貧しさ。
自らの才覚で成り上がった正真正銘の成金・小泉琢磨は、
忍び寄る戦争の影を感じ取っている。
一方、相馬小弥太はいつの間にか風琴屋を出て浅草でコロリに。
でもその後の経過(生死)は不明・・・と
何とも気の毒、不憫なキャラでございます。
ミナは・・・父ひとり子ひとりだったのでしょうかねぇ。

お菓子の名前に麺麭に英吉利と時代を感じますが、
でも会話は現代語ですからして軽〜く読めます。
表紙の可愛らしさ同様のマンガプロット的ストーリー。
実写化しても・・・明治時代じゃセットが大変(苦笑)。

「そうか・・・形のないものの方が、大切な事もあるよな。」

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