「灼熱の魂」

母から託された二通の手紙。
右足のタトゥー。
歌う女。
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ルブナ・アザバル
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原題「Incendies」(アンサンディ・・・でいいのかな?)」は
フランス語で"火事""焼け焦げた""燃え尽きた""焦土と化した"など。
シアターキノA館にて。

カナダに住む中東系の女性ナワル・マルワンが亡くなった。
後日、遺された双子の姉弟ジャンヌとシモンは
公証人ジャン・ルベルから母の遺言を知らされる。
棺も墓石も要らないという遺言は続いて、
父にはジャンヌが、兄にはシモンが
母からの手紙を渡すようにと続いていた。
父は死んだと聞かされており、
兄の存在すら知らないジャンヌとシモンは困惑する。
それでもジャンヌは母の持ち物から見つけた古びた写真を手に、
遺言に従うために中東の母の祖国へと旅立つが・・・。


オリジナルは劇作家ワジディ・ムアワッドの戯曲。
舞台は特に何処と語られてはいませんが、
ムアワッドの祖国レバノンと思って良さそうです。
このレバノンは中東では珍しくキリスト教徒の多い国だそうで、
主人公ナワルもキリスト教徒。
彼女が難民のイスラム教徒と恋に落ちたことが物語の発端ですが、
・・・恋人は異教徒だからと問答無用で射殺。
娘は"一族の名を汚した""暗黒の淵に突き落とす"だの責められ、
子どもは生まれた途端孤児院に。
・・・お宮参りや七五三は神社、
お年玉は儒教から、葬儀やお彼岸、お盆は仏教の風習。
宗教に対してキャパシティーが広い、
或いは大雑把な寛大な国に生まれ育った日本人には
過剰反応にしか思えず呆気に取られる展開。
ところが今度は丸腰のイスラム教徒たち避難民のバスの襲撃シーン。
娘だけは助けようと連れ出した女。
娘だけは助けようと女に託した母。
でもバスは火に包まれる、そして娘は・・・もう言葉も無い。
挙句にナワルが撃ったのはキリスト教右派の指導者となると、
・・・正直、何が何やら判らなくなってくる。

プールサイドでの再会がナワルにどれだけの衝撃を与えたのか、
どれだけ残酷だったのか。
ただ、そのナワルが何故、ふたりの子にあんな遺言を託したのか。
被害者が加害者になり加害者がまた被害者になる。
怒りの連鎖を断ち切って欲しいという切なるメッセージ。
でもジャンヌとシモンには何の罪も無い。
ただふたりが知った真実はあまりに酷過ぎる。
心の傷はあまりに深過ぎる。
そして背負っていくにはあまりに重過ぎる。
・・・月並みな言い方ですがとにかく衝撃的な物語で、
絶望的な想いがいつまでも後を引きます。

ラストで墓石を見つめる"彼"はあの後・・・。

「1+1=1」
「愛するふたりへ。
どの物語から始めようか。」
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Lubna Azabal
Trinity Film
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コメント

最初、プールで始まった話が
あのような形で結実するとは…!
もとは戯曲とのことですが、
映像の多角的な使われ方を観るにつけ
これは、映画向きだなと…。
どういう脚色がなされているのか、
興味があります。

えいさん、
父が誰かを知った双子が無言のままプールで抱き合うシーンが
印象的でした。
オリジナルの舞台ではどのように演出されているのでしょうね。
とにかく衝撃的な作品でした。
Secret

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