『長い長い殺人』

二つの保険金殺人とその前後の殺人事件。
疑惑の男女。
宮部みゆき著『長い長い殺人』
長い長い殺人 (光文社文庫プレミアム)長い長い殺人 (光文社文庫プレミアム)
宮部 みゆき
光文社
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先日TBSで放送されたwowowの2010年制作ドラマを観て、
久しぶりに読んでみました。

12月15日深夜、会社員の森元隆一がひき殺された。
"私"の"あるじ"である所轄署の刑事部長は呼び出され、
現場の足立区の公園造成地のはずれの路上に向かう。
轢き逃げのように見えた被害者ははねられた後、
頭を殴って止めを刺されていた。
第一発見者の女性の嘘を見破った"あるじ"は
別の日に喫茶店で女性に会い話を聞くが、
不倫関係の露呈を恐れる彼女は"あるじ"の買収を図る。
連絡が取れなかった森元の妻・法子は翌朝、女友達と帰宅。
法子の事情聴取を始めた"あるじ"は
彼女が犯人は捕まったのか、逃げているのか、
警察にも見当がつかないでいるのかを一度も聞かなかったこと、
そして被害者が会社で着けていた銀のネクタイピンが
現状から消えていたことが気にかかる。
第一発見者の女性と不倫相手の証言により、
現場から走り去る白い車が判明、
そして隆一には法子を受取人として三社三種類、
八千万円の生命保険が掛けられていた。


『刑事の財布』、『強請屋の財布』、『少年の財布』、
『探偵の財布』、『目撃者の財布』、『死者の財布』、
『旧友の財布』、『証人の財布』、『部下の財布』、
『犯人の財布』、『エピローグ 再び、刑事の財布』と
全11編からなる小説は"登場人物の財布の一人称"です。
ふたつの連続保険金殺人事件と財布の持ち主たちは、
立場も事件との関わり方も被害者or容疑者との関係も様々。
そして財布たち
『刑事の財布』では自分を"私"は"あるじ"と、
『強請屋の財布』では"あたし"は"彼女"と、
『少年の財布』では"僕"は"まさきくん"と持ち主を呼び、
持ち主に寄り添って話を進めていきます。
刑事の財布は警察手帳と交信できない一方で、
拾われた財布と持ち主(拾った側)の財布同士が、
引き出しの中で会話したりする(苦笑)。

大好きな伯母の結婚相手に本能的に警戒心を持ち、
あることをきっかけにそれが間違いでないと気付く雅樹。
でも周囲は彼の言うことを信じない・・・そして悲劇が起きてしまう。
友人の無実を信じていた宮崎を呆然とさせた映像。
そして少年時代の思い出は彼のポーズだった、
もしかすると彼の自作自演だった。
・・・雅樹のパートと宮崎のパートはやり切れない。

連続殺人の犯人たち(と恵梨子のストーカー)は理解不能だし、
理解しようとも思わない。
ただ事件の関係者、或いは疑いを掛けられている人が、
自らメディアに出ることは決して珍しくはない。
マスコミは派手に取り上げ、そしてあっさりと次の話題に移っていく。
でも程度の差はあれ事件に巻き込まれてしまった人々がいる。
そして事件に間接的、或いはカードを拾っただけであっても、
知らなくていいことを知ってしまった、
気付かなくていいことに気付いてしまった人々がいる。
立ち直って欲しい、乗り越えて欲しい。
フィクションなのにそう願ってしまう。
この事件がなければ会うことはなかった三人のラストが
何とも温かい。

「だが、現実にああいう妄想を抱く人物がいるんだよ。
自分はひとかどの人間だ。
テレビや雑誌で騒がれているような連中よりも、
自分の方が本当はもっともっとずうっとえらいんだと
思い込んでいる人間が
。」
「彼らの目的は金じゃない。
目的は、今の彼らのような立場をつかむことだった。
日本中から注目され、ただの背景、ただの通行人、
ただの有象無象から抜け出して有名人になることーただそれだけだ。
その意味では、彼らはまんまと成功した。保険金は、ただの余禄だよ。」
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ドラマのレビューです(別館に移ります)。「長い長い殺人」

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