『マークスの山』

原点は昭和51年秋。
南アルプス北岳。
そして暗い山。
高村薫著『マークスの山』
マークスの山〈上〉 (新潮文庫)マークスの山〈上〉 (新潮文庫)
高村 薫
新潮社
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DVDでWOWOWのドラマを観て読み返したいと思っていたのですが、
・・・案外手元にあるとダメですね。
いつでも読めると思うとつい後回し。
言わずと知れた第109回直木賞(平成5年/1993年上期)受賞作。

昭和51年10月。
山梨県警の佐野警部補らは一家心中事件の捜査で
南アルプス北岳に登ってきた。
神奈川ナンバーの乗用車の車内に排気ガスを引き込んだもので、
夫婦は死亡、ひとり助かった10歳の男の子は、
歩けば4時間はかかる雪の山道を歩いた先の山荘で保護されていた。
その三日後、建設作業員が登山者を殴り殺した事件が起こり、
佐野警部補ら捜査陣は再び北岳に向かった。
しかし登山の初心者ではない被害者が、
何故未明の吹雪の中を懐中電灯を頼りに下山を強行したのか、
佐野にはひっかかるものがあった。
そして平成元年、北岳で白骨が発見された。


十何年ぶりかで読んで最初に感じたことは登場人物たちの孤独さ。
警察組織の内情など存じませんが、
同じ係(班)の内でも手柄をあげるために競い合い、
出し抜き合い、罵り合う現場の刑事たち。
そして上層部やキャリア組たちから圧力がかかり、
公安や地検、そして省庁からの横やりが入る。
警視庁で異端視される存在になった合田雄一郎は
時に別れた妻との日々を思い出し、
時に元義兄(妻の兄)の地検検事・加納と繋がりながら、
事件を・・・連続殺人犯・マークスを追って行く。
警察や巨大権力の内部のドロドロを見せ付けられながら、
それに順応して組織の一員として生きている自分を見つめる合田。
警察組織の建前や裏を知りつつ、
強かにかわすペコこと吾妻警部補も
私生活では義父の問題を抱えている。
ミステリーでありながら・・・と言うよりは群像劇。

そして一酸化炭素中毒の脳へのダメージから
"3年周期で入れ替わる明るい山と暗い山"という両極端な精神活動に、
心身を支配されてしまったもう一方の主人公・水沢裕之。
精神病院のベッドに拘束されていた自分を助けた高木真知子を、
利用する水沢の中のマークスという人格。
出所した水沢が頼ったのは養父母ではなく真知子。
極度の健忘症で顔も覚えていない真知子のために買ったメロン。
水沢の中のもうひとりの存在に怯えながら水沢を支えた真知子。
孤独なふたりが寄り添っての暮らしは長くは続かなかった。

水沢が浅野病院長宅に空き巣に入らなければ。
水沢が岩田に会わなければ。
彼らに殺意があったとはいえ、
それでもあの登山パーティーでさえ死ななければ・・・。

ところで文庫化において書き直すことで有名な高村薫ですが、
エンディングはハードカバーの方が好きだわぁ、余韻があって。

「誰かがここにいる。何かとても変だ。
ここにいるやつが脳味噌を食ってるんだ。」
マークスの山〈下〉 (新潮文庫)マークスの山〈下〉 (新潮文庫)
高村 薫
新潮社
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マークスの山 DVDコレクターズ・BOX (3枚組)マークスの山 DVDコレクターズ・BOX (3枚組)
上川隆也 石黒賢 小西真奈美 高良健吾
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
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「マークスの山」ドラマレビュー(別館)です。
第1話第2話第3話第4話第5話(最終話)

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