「パープル・バタフライ(紫胡蝶)」 (中国/フランス 2003年)

『1931年、上海。
叶わない愛の夢を見た。』
映画レビューはネタバレしません。
パープル・バタフライ [DVD]パープル・バタフライ [DVD]
チャン・ツィイー 仲村トオル
角川エンタテインメント
by G-Tools



 先週の日曜日(2月5日)、
 これはきっと私の好みの映画という勘と
 二週間限定上映という響きに惹かれて、
 JRが運休して高速道路が封鎖される大荒れの天気の中で
 観に行きました。
 
1928年、満州。
父が満州鉄道会社で働いている日本人、伊丹は、
シンシアという美しい女性と出会い恋に落ちるが、
伊丹が日本軍に招集され2人は離れ離れに。
旅立つ伊丹を見送った後、シンシアの目の前で
地下組織の活動に身を投じていた兄が暗殺される。
1931年、上海。
シンシアはディンホエと名乗り、
レジスタンス組織『パープル・バタフライ』のメンバーとなっていた。
その頃、伊丹は陸軍諜報機関のスパイとなり上海の地に降り立つ。


何せ台詞は最小限(最小限過ぎるという気もする)で、
時間軸が交錯するため、想像力と理解力とが試される映画。
『パープル・バタフライ』というレジスタンス組織はという説明さえ
一切無し。
タイトルを連想させるもの・・・
強いて言えばスードゥーの悲劇の発端となる胸のブローチくらい。

スードゥーとイーリンのダンスのシーンがどうしてこんなに長い?と
思って見ていました。
この映画はとにかく表情のアップが多くて各々のシーンが長い。
例えばイーリンがスードゥーを迎えに駅に来たシーン。
彼女がプラットホームを歩くその向こう側には何故か車が
ゆっくり走ってそして止まる。
イーリンを追っていたカメラが車から降りた男ふたり女ひとりに
ゆっくりと焦点を移す。
車から降りた3人は歩道橋を渡りはじめ、
ひとりの男が立ち止まって見下ろした線路に列車が走り込んでくる。
男と女は橋の階段を降りて列車を待つ人ごみの中に入ってくる・・・。
これがひとつのシーン・・・。

ドアをノックする音にハッとする表情はあっても
ノックしたのは誰なのかはわからない。
ところが全然違うところでドアをノックする仕草。
これがさっきの場面に繋がっていく。
時間軸が交錯するのは珍しい手法ではないですが、
回想シーンではない劇中で突然時間の針が逆に回っていく。
一瞬、錯覚してしまって・・・(苦笑)。

イーリンの部屋にあった小瓶に入れられて息絶えた蝶が
『パープル・バタフライ』の組織であり、
羽ばたく蝶のシーンが戦争に翻弄される大陸を暗示している、
そしてそれが最期のドキュメンタリーに繋がっていくんでしょう。
それにしても長いし、しつこい・・・。
今までのアンニュイなムードが飛んでしまう・・・。

日本人の男と中国人の女の祝福されない愛。
再会した時には片や陸軍の諜報部員、片やレジスタンスの戦士。
結論は最初から出ていたのかも知れない。
シンシアという少女からテロ組織のディンホエとなっても
彼に会って愛の再燃を抑えられない。
叶わぬ愛と知りながら惹かれていくヒロイン。
愛した彼女との再会は仕組まれたものと気付き、
今の彼女の正体に愕然としながらも
失われた時間を取り戻し彼女との未来を手に入れようとする伊丹。
戦争に無縁な立場から不幸な偶然で双方の組織に追われ、
恋人イーリンを目の前で殺されてしまうスードゥー。
そして駅にスードゥーを迎えに行ったばかりに
無残な死を遂げるイーリン。
このあっけなく死んでしまうイーリンが何度も出てきます。
そしてスードゥーとイーリンのシーンが後々効いてくる。
狂言回しの役回りの彼女の表情が生きてくる。
ここに女の心を自分に向けられず、
身体で引き止めることも拒まれ、
戦うことでしか女と生きられない組織のリーダー、
シエ・ミンが絡んでいく。

不安な時代を連想させる暗い画面と打ちつける雨と。
ハンドカメラの画像の不安定な揺れとピントのずれが
それぞれの気持ちと時間(とき)を現していく。
死んだと思っていた彼が突然現れてたりした強引なところが
ちょっと惜しいけれど・・・。
ところで5時に車が迎えに来ますとかいうシーンで
伊丹が出て行った後山本はほくそ笑んでいましたよね?
山本は本当に死んだんでしょうか・・ここに来て気になって・・・。

策を巡らせ女と一緒に生きようと。
罠だと思った言葉が本物だと気付いた時にはナイフが・・・。

『1931年、上海。
叶わない愛の夢を見た。』
B0006N2EVYパープル・バタフライ(紫胡蝶)/ Purple Butterfly(REGION 1)
Zhang Ziyi,Lou Ye,nakamura toru
Palm Pictures 2005-02-15

by G-Tools

コメント

210.147.149.46
TBありがとうございました。
この映画は本当に想像力と集中力が必要な映画でしたね(笑)。
でも私はそれほど疲れた感も無く、惹き付けられてみていたように思います。
残酷な時代と運命が心に残ります。
こちらからのTBがうまくいかなかったので、
コメントで失礼します。

219.164.161.51
あじさいさん、
台詞や説明がない分、集中力が必要な映画でしたが、
私も惹きつけられました。
>残酷な時代と運命が心に残ります。
特にスードゥーとイーリンはあんなことに巻き込まれなければ・・・。
トラックバックできなかった件ですが、
NetLaputaブログがスパム対策で重複TBを弾くようになっているので
そのせいだとわかりました。
ご迷惑&ご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。
NetLaputaの確認に時間がかかりコメントが遅れました。
重ねて申し訳ありません。

125.193.44.79
TBありがとうございました。
遅ればせながら、こちらからもTBさせていただきます。
最後のドキュメンタリー映像は、
ほぼ100%監督の意志ではなかったと思います。
作品の雰囲気をブチ壊しにする愚かな選択でした。
自分も以前は地方に住んでいたんですが、
2週間限定公開という響きには弱かったです。

60.35.28.162
栗本 東樹さん、
レビューを書いてから知ったのですがドキュメンタリーは
当局の圧力のようです。
確かにこのテの映画としては日本人はそれほど悪には描かれていませんし、
そうしなければ中国本土で公開は出来なかったようです。
>作品の雰囲気をブチ壊しにする愚かな選択でした。
愚かという表現は酷ですが、
ラストの何分かで全く違う映画になってしまいました・・・。

202.223.112.253
TBありがとうございました。反応が遅くて大変申し訳ありません。
リウ・イエの悲痛な表情が浮かんでくるこの作品。アジア映画に日本の影がちらつくたびにドキドキしてしまいます。まだまだ戦争の傷は癒えていないことを痛感します。

219.167.98.113
藍さん、
ご訪問ありがとうございます。
リウ・イエはこれが初見です。
ただでさえ台詞が少ないこの映画の中で
彼は本当に「目」で訴えていたように思います。
>まだまだ戦争の傷は癒えていないことを痛感します。
心に痛い部分がありますね。
伊丹とシンシア、スードゥーとイーリン。
同じように戦争や時代に翻弄された恋人たちがいたのでしょうし、
世界では今もそんな恋人たちがいるのでしょうね・・・。

60.43.64.227
神経を、研ぎすまされる映画でした。
些細なことだと思って見逃すと、
なにか大変なものを見失ってしまいそうで。
でもそのぶん、靴音や雨音や、床のきしむ音、
そういった音が、ずいぶんと耳に残った映画でした。
わたしも、駅での長回しのシーンが印象に残ってます。
意図的にハンディカメラで撮ったような、
ちょっとぶれる画面が人の目を通しているようで、
まるでだれか、すべてを超越した傍観者が
ことの一部始終を見ていたかのような、
そんな印象を残しました。

220.220.191.196
音樹さん、
冒頭から引き込まれて見入っていました。
>些細なことだと思って見逃すと、
 なにか大変なものを見失ってしまいそうで。
あるシーンが突然違うところで引っかかって
それが次のエピソードの布石になっていく・・・。
凝ったつくりの映画でしたね。
駅での長回しの映像は印象的でした。
>まるでだれか、すべてを超越した傍観者が
 ことの一部始終を見ていたかのような
そしてこれから起こることを全て見越しているような・・・。
Secret

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