『チヨ子』

着ぐるみののぞき穴から見た人々は。
宮部みゆき著『チヨ子』
チヨ子 (光文社文庫)チヨ子 (光文社文庫)
宮部みゆき
光文社
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裏表紙に拠るとこれは
"表題作を含め、超常現象を題材にした珠玉のホラー&ファンタジー五編を収録。
個人短編集に未収録の傑作ばかりを選りすぐり、いきなり文庫化した贅沢な一冊"。

明日のバーゲンセールでお客さんに風船を配るアルバイトのために
スーパーに来た"わたし"は店長から
その時に着るピンクの色のウサギの着ぐるみを渡される。
5年間、倉庫にしまいぱなしだったらしい着ぐるみは
灰色のかびと漂白剤で色が抜けたらしい白い点があちこちにあった。
アルバイト当日、着ぐるみをかぶりのぞき穴から外を見ると、
誰もがみんな着ぐるみを着ているように見えた。
そして鏡に映った自分の姿は右耳がぺこりと折れている白ウサギ。
わたしはこの白ウサギに見覚えがあった。(『チヨ子』)


『雪娘』、『オモチャ』、『チヨ子』、『いしまくら』、
『聖痕』からなる一冊。
表題作の『チヨ子』はファンタジーというより不思議系の物語で、
ほんのり温かい手触りですが他の四篇は毛色が違います。
少女を殺した犯人が野放しになっている不安よりも
両親の悲嘆に暮れた顔を見て暮らさなければならない億劫さ。
"地元の人でないから"と商店街の人々に
良く思われていない玩具屋さんのおじいさんへのデマ。
殺人事件の被害者に対して吹聴されていく悪い噂。
第三者の本音や無責任な悪意、匿名(あるいはマスコミ)の暴力・・・。
これらをベースにした中編『聖痕』では
人の心の闇と現代社会に巣くう狂気と恐怖が描かれているのですが、
・・・千川のやるせなさ、やりきれなさはわからなくはないけれど、
でも正直なところ何故こうなるのかは理解も共感も出来ない。
(・・・まあ共感出来たら出来たで
違う問題がありそうな気がしないでもないけれど。)
ただ自分の意思に関係なくそうなってしまった、
見てしまった
柴野和己の恐怖や絶望はどれほどだったろうかと。
他に道が無かったろうとしか。

私が一番宮部さんらしさを感じたのは『いしまくら』。
仕事人間の父と中学生の娘に噂に幽霊に江戸時代の民間伝承「石枕」。
父娘の思い通りの結果ではなかったけれどでもなんだか爽やか。
「石枕」の夫婦だけじゃない、八田あゆみだけじゃない、
誰もが"顔"を持ち、使い分けているんじゃないかしら、
親子であっても夫婦であっても。

「人は見たいものを見る。
外界を見ているつもりでも、結局は自分の心の内側を見ているだけなのだ。
滅びたはずの「石枕」のベクトルは、罪悪感という形で、
かろうじてまだ残っているのかもしれない。」(『いしまくら』)
理由 (新潮文庫)理由 (新潮文庫)
宮部みゆき
新潮社
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コメント

こんにちは!
トラバありがとうございました。
お返しが遅くなってごめんなさい。
わたしも「いしまくら」が一番印象に残りました。
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チヨ子(宮部みゆき)

49.129.4.228ホラー&ファンタジー5編を収録した短編集。

宮部みゆき「チヨ子」

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