『戦争を取材する』

空爆、地雷、子ども兵・・・紛争地の子どもたち。
山本美香著『戦争を取材する−子どもたちは何を体験したのか』
世の中への扉 戦争を取材する─子どもたちは何を体験したのか戦争を取材する─子どもたちは何を体験したのか
山本 美香
講談社
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2012(平成24)年8月20日、
シリア北部のアレッポでシリア政府軍の砲撃を受けて、
亡くなられたジャーナリスト・山本美香さん。
昨年発売された本書は彼女の絶筆となってしまいました。

秘境を旅する冒険家や、
エジプトや南米で遺跡を発掘調査する考古学者を夢見た少女は、
中学生になり海外特派員の仕事の中身に目がいくようになる。
新聞記者だった父の姿を見ていたこともあり、
報道記者、ディレクターを経て世界の紛争地域を取材するようになる。
自分のしている仕事がどれほど意味のあることなのか、
自信をなくしていた2000年、
アフガニスタンでの移動診療所の取材が彼女の転機になる。


"[はじめに]戦争ジャーナリストという仕事、
[第1章]戦争を想像してみて下さい、
[第2章]悪魔の兵器、地雷を知っていますか?、 
[第3章]ゲリラで戦っていた少年たち、
[第4章]戦争のトラウマという苦しみ、
[第5章]なぜ戦争になるのでしょう、
[第6章]難民――生きる場所を求めて、
[おわりに]世界の平和のために"から構成される本書は
巻末広告によると小学生向けノンフィクションシリーズの一冊。
パワーポイントを使いながら子どもたちに語りかけるような文章で、
登場するのもまた日本では小中学生に当たる紛争地の子どもたち。
地雷で両足を失った少年に10歳で誘拐され子ども兵にされた少年、
そして目の前で父親が撃たれるのを目撃した少女。
写真がすべてモノクロなのは
必要以上にショッキングさを強調しないためだと思います。

コソボ、ウガンダ、アルジェリア、イラク、アフガニスタン、
チェチェンと登場する国も様々。
各章ごとにまずその国の簡単ながら成り立ちや歴史が書かれており、
例えばレバノン([第1章])のページを読むと
遅ればせながら映画「灼熱の魂」のバックボーンが
少しだけ判るように思います。
ニュースで耳にする"ヒズボラ"もレバノンが始まりだったのですね。

2003年のイラク戦争。
フセイン大統領(当時)の銅像が引き倒された映像が印象的ですが、
当のイラク国民は様々な思い出フセイン政権の崩壊を見ていた。
"これで自由な生活ができる"というシーア派の人々がいる一方で、
フセインと同じスンニ派の絶望感と
シーア派から復讐されるのではないかという脅え、
フセイン政府への不満以上に外国の攻撃に屈辱を感じ、
アメリカは石油資源を狙っているのではないかとの疑い。
そして誰もが思うこれからの不安・・・。
駐留していたアメリカ軍へのイラク国民の複雑な心理。

ただ、テロは到底肯定できることではありません。
何より著者自身が凶弾に倒れてしまった・・・。
第一報の流れ弾に・・・とか銃撃戦に巻き込まれたということではなく、
外国人記者を狙い撃ちにしたというのが真相のようです。
(山本さんを含め)ジャーナリストや一般の人々の犠牲を
相手のせいと非難し互いの主張の宣伝に使おうという意思が
政府側・ゲリラ側双方に見えます。

厳しい報道規制を引いている国や地域も多いですが、
紛争地域や災害など今はあまりタイムラグもなく世界中に発信されます。
ただ私たちがそれをニュースとして知ることができるのは、
現地で取材し報道するジャーナリストの存在があってこそ。
戦闘地域に生活する女性たちに優しい眼差しを向け、
赤ちゃんに優しい声をかけたひとりのジャーナリストが
非業の死を遂げてしまいました。

"紛争地では、だれにも知られぬまま、
何千、何万という人たちがひっそりと命を落としています。
私たちがただ知らなかったというだけで、たくさんの命が失われている。
知らないことは罪だとさえ思います。"
"どんなに戦争取材の経験を重ねても、
目の前で人が死んだり、傷つけられている姿を見ると、心が大きく揺れ動きます。
感情が高ぶったり、落ち込んだりすることもあります。
でもそれは私が人間だからこそわきあがってくる感情です。
戦争だから人が死ぬのはあたりまえだ、などと人の死に慣れてしまったら、
それこそ恐ろしいことです。"
"武力による戦いは、しだいにどっちが先に攻撃したのかわからなくなります。
仕返しをくりかえすうちに戦争の被害は拡大していきます。
暴力による報復が、また次の暴力をうみだしてしまうのですが、
どうしたら、この戦いの連鎖をとめることができるでしょうか。"
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「灼熱の魂」拙ブログのレビューです。「灼熱の魂」

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