「ぼくたちのムッシュ・ラザール」

きれいな学校で先生が死にました。
水曜日の夜に。
Monsieur LazharMonsieur Lazhar
Philippe Falardeau
Music Box Films
by G-Tools



プロデューサーは映画「灼熱の魂」のおふたりで、
「灼熱の魂」同様戯曲の映画化作。
シアターキノA館にて。

ある冬の朝。
モントリオールの小学校の教室で担任のマルティーヌが
首を吊って死んでいた。
牛乳当番で早めに登校したシモンが第一発見者になり、
シモンの同級生アリスもまた現場を見てしまう。
事件後学校側はスクールカウンセラーを呼ぶなど、
子どもたちの心のケアに追われるが、
教師は誰も来たがらず後任の教師は1週間経っても決まらない。
転校する生徒も現れる中でアルジェリア移民のバシール・ラザールが
校長室を訪ねてくる。
新担任として採用されたラザールは子どもたちと打ち解けるが、
一方で突然担任教師を失った生徒たちは動揺したままだった。


難民と認定されなければ本国に送り返されてしまう。
その危険を承知の上でそれでもラザールが代用教員に応募したのは、
妻が教師だったから。
クレールの授業を見ていたように、
妻のそれを見つめていたこともあったかもしれない。
アルジェリアは義務教育で旧宗主国のフランス語を学ぶそうで、
これも彼の助けになったのかもしれない。
ただ一番の動機は突然衝撃的な形で
大切な人を失った子どもたちが自分と重なったからでしょう。
それにひきかえ、いくらハードに制約があると言っても、
壁を塗り替え備品を取り替えただけの同じ教室で
授業を受けさせる学校側の乱暴さ。
数週間で子どもたちは落ち着いたと言うカウンセラー。
ではシモンの行動をどう説明するのか。
校庭で鳥の世話をする彼は決して粗野な子ではない。

シモンの家庭の問題もマルティーヌの死の理由も明かされない。
ただ、夫がマルティーヌの遺品の教材を引取りに来ないのは、
こちらの家庭も何か問題があったのではないかと思う。
シモンに拒絶され噂になり、
彼女は学校に居場所をなくしてしまったのではないかしら。
・・・その後のマルティーヌの選択は最悪だけれど。

肌の色も様々な子どもたち。
チリ出身のリカルドの祖父の死。
マリーに水を向けられたシモンが話す痛みと苦しみ。
"僕のせいじゃないよね?"
シモンの叫びはそのままラザールの思いに繋がる。
自分が先に出国したから妻と子どもたちは殺されてしまったんじゃないのか?

ラザールの寓話に描かれたオリーブの木とさなぎ。
意味に気づいた聡いマリーのラストシーンが切なかった。

「君たちと会えて私は幸運です。」
「頭から離れないのはその人を愛し愛されたからだ。」
ぼくたちのムッシュ・ラザール [DVD]ぼくたちのムッシュ・ラザール [DVD]
フィリップ・ファラルドー
ニューセレクト
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コメント

これは胸震える映画でした。
あの少年の悲痛な叫びが
今回、コメントをいただいたことで
鮮やかによみがえってきました。
ほんとうに、あのラストは素晴らしかった。
なぜか、
自分の頭の中では勝手に
パッヘルベルのカノンがそのシーンに
ダブっています。
あっ、TBダブってしまいました。
すみませんでした。

えいさん、
心に響いてくる映画でしたね。
>なぜか、
自分の頭の中では勝手に
パッヘルベルのカノンがそのシーンに
ダブっています。
あの旋律はラストの崇高さに重なりますね。
おっしゃることが判るような気がします。
TB了解です。
ご丁寧にありがとうございました。

sannkenekoさんの記事を拝読して、あの感動が甦りました。
子供たちには一生の記憶に残る事件なのに、学校や保護者の配慮が無さすぎましたね。
ラザール先生が戻ってきてくれたら、どんなにかいいのに、と思います。

こんばんは。
コメントとTBありがとございます。
>アルジェリアは義務教育で旧宗主国のフランス語を学ぶそうで....
そうなんですか?知らなかったです。
かつてフランスはアルジェリアを支配下に置いていた次期もあり、アルジェリアからの移民も多いですね。
さてこちらはそのアルジェリア難民のムッシュ・ラザールがほんわかと温かくてスゴく良かったです。

こにさん、
>子供たちには一生の記憶に残る事件なのに、学校や保護者の配慮が無さすぎましたね。
早く元の状態に戻したい学校側の心情もわからなくはないですが、
壁を塗り替えただけ、カウンセリングもおざなり。
挙句話題はシモンの退学云々。
学校側の感覚を疑いますよね。
>ラザール先生が戻ってきてくれたら、どんなにかいいのに、と思います。
難民に認定されラザールの人生も授業も"これから"だったのに。
あまりに短かかったけれどでも忘れられない時間になったのではないでしょうか、
ラザールにも子どもたちにも。

margot2005さん、
公用語(国語)のアラビア語は別として、
フランス語も広く用いられているはずです。
ラザールが新天地にカナダを選んだのは言葉の理由もあったのではと思います。
文法でその呼び方が古いとか言うシーンがありましたが、
そのあたりは伝えられたそのままだったのではないかと思って観ていました。
スペイン語圏でもメキシコやコロンビアとスペインでは
語彙など違うそうですから。
>ムッシュ・ラザールがほんわかと温かくてスゴく良かったです。
彼本来の人柄と子どもたちへの愛情。
教員の資格はなくても子どもたちへは最高の授業だったと思います。
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