「かぞくのくに」

1997年夏。
25年ぶりに兄が帰ってきた。
国交のない祖国から帰ってきた。
かぞくのくに [DVD]かぞくのくに [DVD]
安藤サクラ 井浦新
角川書店
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シアターキノのアンコール上映、
[2012年キネマ旬報ベスト・テン 日本映画第1位!]

ようやく観ることが出来ました。
シアターキノA館にて。

在日朝鮮人とその家族が北朝鮮へ集団で移住する"帰国事業"。
1970年代に16歳でこの帰国事業に参加して北朝鮮に移住したソンホは、
脳腫瘍の治療のために非公式ながら再入国を果たす。
三か月の期間限定ながらも25年ぶりの再会に
妹のリエや母ら家族は歓喜するが、
ソンホには常にヤン同志が付き従っていた。
ソンホを診察した医師は手術は可能と診断するが、
三か月の滞在期間では無理だと治療を断られてしまう。
リエがソンホの幼馴染で医師の妻のスニに相談していた矢先、
突然朝鮮本国より帰国命令が下る。


印象的な台詞や場面はいくつもあるのですが、
見終えて残るのは理不尽さとやり切れなさ。

スーツケースの値段を見た後の悪戯っぽさが
ソンホの素なのだと思う。
その彼が・・・少年は思考を停止させる。
祖国で生き抜くために。

ソンホとリエの会話を聞いた父に
"判るわけないじゃないか!"と激高するソンホ。
ほの暗いながらも灯りの下のいる父。
ソンホは真っ暗な中にひとり。
この"帰国事業"で半島に渡ってはみたものの、
楽園の現状を見て、またここでも差別されたりで、
妻子を日本に帰そう、また家族で日本に戻ろうとして
一家全員収容所に送られた、または処刑されてしまった。
・・・テレビの特集か何かで見たような記憶があります。
16歳の少年はたったひとりで生きてきた、生き抜いてきた。

車から降りて町を見回しながら歩くソンホの姿をただ見つめ、
抱きしめるオモニ。
貯金箱の中身を抱えて家を飛び出すオモニ。
病気の我が子をどうにも助けられない母の苦悩。
帰国事業を実行した立場の人間として息子を送り出した事に、
父親としての後悔と自責の念を抱え込んでいる父。
ソンホに呼び出され別れを告げられたスニの絶望感。
安藤サクラ、井浦新、ヤン・イクチュンらはもちろん、
宮崎美子、津嘉山正種、京野ことみが見事。
監督の実体験を基にした作品という重さに加えて、
初診時に韓国から来られた・・・と言う医師の言葉。
韓国には行けないというリエの言葉を聞いた生徒の表情。
描かれるのは分断された隣国に対する日本人の意識。
国交のない国の国籍を持つ人々の日本との距離感。

白いブランコ。
豚の貯金箱。
用意されたスーツ。
母の手紙。

子どもがサッカーボールをねだるくらいですから、
ソンホは(かの国では)比較的恵まれた生活をしているのでしょう。
それでも任務と言いながら治療のために滞在を伸ばすことも許されない。
それどころか電話一本で帰国が決定する。
「俺はな、俺はもうこう生きるしかないんだよ。」
・・・なんて悲しい言葉なのでしょう。

車が動き出しても兄の手を離そうとしないリエ。
黙ってその手を振りほどいたソンホが
故郷の風景を目に刻みながら白いブランコを口ずさみ、
そして思考を停止させる。
帰国したソンホを待っているのは総括、
そして麻痺?記憶障害?その後にあるのは・・・。

「あなたもあなたの国も大嫌い!」
「お前は、お前には考えて欲しい。
お前はたくさん考えろ。
どう生きるか考えて納得しながら生きろ。」
兄~かぞくのくに兄~かぞくのくに
ヤン ヨンヒ
小学館
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北朝鮮で兄(オッパ)は死んだ北朝鮮で兄(オッパ)は死んだ
ヤン ヨンヒ 佐高 信
七つ森書館
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コメント

こんにちは。
「白いブランコ」にはやられました。
自分があの曲を聴いて育った世代だからでしょうか?(なんて歳がバレますね)
いま、公式を開いたのですが、
この曲が流れていますね。
ヤン・イクチュンも北の人間を
肌身に感じさせる演技。
宮崎美子にも泣かされました。

えいさんへ、
まだ少年のソンホを送り出す時、母はどんな思いだったのでしょうね。
やせ細った写真を見て泣いた母が再会を喜び、そして・・・。
最近はクイズ番組でお見かけすることが多い宮崎さんの演技に泣かされました。
そしてあの国で生き抜くために家族を守るために懸命になっているヤン同志が、
あのスーツをどんな思いで見つめ袖を通したのか。
俳優陣は素晴らしいとしか言いようがないですね。
長い歳月を象徴する「白いブランコ」。
こんなに切ない曲だったんですね。

こんにちは。
コメントありがとうございました。
お邪魔するのが遅くなりすみません。
何とも切ないお話でした。
実話ベースなので、私もあんなに若い青年が
こういう事業の対象になっているとは驚き
でした。おっしゃるように宮崎美子さん、いつも
イメージとは違い迫真の演技でしたね。
とても印象的です。

mezzotintさんへ、
こちらこそお越しいただきありがとうございますo(_ _)o
>実話ベースなので、私もあんなに若い青年が
こういう事業の対象になっているとは驚き
でした。
後で知りましたが監督の三人のお兄様がモデルだそうですね。
送り出す方にも色々な事情があったのでしょうけれど・・・。
>おっしゃるように宮崎美子さん、いつも
イメージとは違い迫真の演技でしたね。
家族や周囲の人間の無力さややり切れなさと祈りが、
母から伝わってきたように感じました。
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