『萩を揺らす雨』

杉浦草(そう)。
数えで七十六歳。
和食器とコーヒー豆の店・小蔵屋主人。
吉永南央著『萩を揺らす雨』
萩を揺らす雨―紅雲町珈琲屋こよみ (文春文庫)萩を揺らす雨―紅雲町珈琲屋こよみ (文春文庫)
吉永 南央
文藝春秋
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表紙の可愛らしさに手を伸ばしてみました。
この著者の作品は初めてです。

丘陵から大きな観音像が見下ろす街・紅雲町(こううんちょう)。
杉浦草(そう)が祖父が開き両親が営んだ雑貨店・小蔵屋を、
和食器とコーヒー豆を商う店に一新したのが六十五歳の時。
無料でコーヒーを一杯飲めるサービスが評判の店だ。
小蔵屋の試飲の常連である客たちの会話から、
近所のマンションのある一家に最近暮らし始めた老人が、
虐待されているのではないかと感じ始めた草は・・・。


『紅雲町のお草』『クワバラ、クワバラ』『0と1の間』
『悪い男』『萩を揺らす雨』からなる連作短編集。
『紅雲町ものがたり』が文庫化した際に改題されたそうです。
ただ、ほんわかした表紙とは裏腹、物語自体はシビア。

気になって夜更けにマンションまで何度も足を運ぶ草は、
"田舎の窮屈な、蜘蛛の巣を引っ張り合う人々"と
変わらないじゃない?と思いつつ、
徘徊老人扱いされてしまうのはやっぱり気の毒。
ただ家族の縁の薄い草が出会う家族の物語は
ハピーエンドじゃないのがリアルと言うか救いがない。
白石が誰にも相談できなかったのも、
頼れなかったのもそれが家族だったからだし。

その白石が登場する『0と1の間』が一番印象に残りました。
娘夫婦の家に身を寄せた(というか引き取られた)宇島の苛立ち。
自分が自分らしく生きるための誇りというか、張り合い。
老いを自覚しながらも草には小蔵屋がある。
時々は近所で暮らす二人の友人に食事を届けている。
そんな草でさえ、そうできなくなる日は確実にやってくる。

うん、他人事じゃないんですよね。
まだ明日は我が身という程差し迫ってはいないけれど、
そう遠くない将来には我が身・・・。

ところでこれはジャンルで言うと何になるのかとググってみると
"コージー・ミステリー"と呼ばれる範疇らしい。
(⇒Wikipediaコージー・ミステリ(cozy mystery)
・・・シャム猫ココシリーズもコージーミステリーなのねぇ。
今更ながら(^_^;

でもコーヒーと和食器の店がそんなに繁盛するのかしらねぇ。
経費で落とすとはいえ、試飲のお客様は毎日相当数いらっしゃる様子。
いくら贈答用の需要があると言っても久実の人件費が出ることが不思議。
これも謎ですねぇ・・・。

「弱いと認めちゃったほうが楽なの。
力を抜いて、少しは人に頼ったり頼られたり。
そうしていると、行き止まりじゃなくなる。
自然といろんな道が見えてくるものよ。」
猫は銀幕にデビューする (ハヤカワ・ミステリ文庫)猫は銀幕にデビューする (ハヤカワ・ミステリ文庫)
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