『ぼんくら』

深川の鉄瓶長屋。
八百屋の息子が殺された。
宮部みゆき著『ぼんくら』
ぼんくら(上) (講談社文庫)ぼんくら(上) (講談社文庫)
宮部 みゆき
講談社
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深川北町の一角にある通称・鉄瓶長屋。
鉄瓶長屋の地所の持ち主は、築地の俵物問屋の主人であり、
明石町で「勝元(かつげん)」という料亭も営み、
他にもいつくか地所を持っている湊屋総右衛門。
鉄瓶長屋は元「勝元」の番頭だった久兵衛を差配人のもと、
表に六世帯、裏に十世帯、つつがなく過ごしてきた。
ある日の夜明け前、家の前を通り過ぎる足音で目を覚ましたお徳は、
とうとう八百屋「八百富」の富平がいけなくなったのかと、
久兵衛の家に駆けつけた。
座敷に富平の娘・お露が座っているのを見て、
やはり・・・と思ったお徳に久兵衛は低い声で言った。
死んだのは富平ではなくお露の兄・太助だと。
お露は"殺し屋"が来て兄を殺してしまったと言っていると。

一昨年、「勝元」の元奉公人が久兵衛に襲いかかる騒ぎがあった。
お徳の煮売屋の常連客の本所深川方の同心・井筒平四郎に依ると、
その男・正次郎が太助を殺した"殺し屋"だと言う。
真っ先に駆けつけ久兵衛を助けた太助を正次郎が恨んでのことと、
お露がそう言っていると。
しかし、お徳は久兵衛の家で見たお露の寝間着の浴衣の袖の血が
気になっていた。
井筒の旦那はそれを"返り血"と呼んでいる。
しかし、寝たきりの富平を哀れんで・・・というならまだしも、
お露が杖とも柱とも頼む兄の太助を何故殺すのか・・・。


『殺し屋』『博打うち』『通い番頭』『ひさぐ女』『拝む男』『長い影』
『幽霊』からなる連作短編集・・・なのですが、『長い影』が長い長い。
というか『長い影』こそ本編で初めの五つの短編は『長い影』の伏線。

"人を使うことはするが人を信用せずに今の身代を築き上げたこの男"と
『殺し屋』に確かに書いてある。
この人にとっては人は"自分が使うもの"であって、
人の気持ちや思いはどうだっていいのでしょうね。
主(あるじ)は奉公人の生殺与奪の力を持っているのだから、
久兵衛を責めることは出来ないでしょう。
でも久兵衛を慕い信じきってきたしっかり者のお徳。
言われるがままになった差配人を必死で務めてきた佐吉。
店を持たせてやるから・・・と豆腐屋一家を操り・・・。
無駄に気の長〜い馬鹿みたいに壮大で遠大な計画に
翻弄された人々の思い。
おふじと葵のことも身から出た錆、
・・・当人はそうは思っていないけれど。
事実を聞き出した井筒平四郎のやるせなさ。

跡取りとなる子どもがいない井筒家の養子にと
美人の細君が望むのは奥方の次姉が嫁いだ商家の五男・弓之助。
細君の血を引いて超がつく美形の十二歳の弓之助には
何でも計ってしまう癖ともうひとつ・・・。
そして宮部作品の準レギュラー(?)、記憶力抜群のおでこ。
悲しいやり切れない物語なのですが、
井筒平四郎の側の話はちょっとほのぼの、なんだかほんわか。
そうか、おでこと弓之助は話が合うのね(苦笑)。

次は続編の「日暮らし」を。

「(差配人が)いなくなった事情が事情なのに、
あとに誰も寄越さないまま放っておいて、
湊屋さんはいったい何を考えているんでしょうかね」
ぼんくら(下) (講談社文庫)ぼんくら(下) (講談社文庫)
宮部 みゆき
講談社
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コメント

トラックバックありがとうございます。
私は、それまでも宮部作品は好きだったのですが、現代ミステリーばかり
それをこの「ぼんくら」が宮部時代劇も面白いじゃないかと思わせてくれたきっかけの本です。
この「ぼんくら」の続編「日暮らし」「おまえさん」も大好きです。
また同じく宮部さんの三島屋変調百物語シリーズや、最近では回向院の茂七が活躍する「本所深川ふしぎ草紙」や「「初ものがたり」にハマってます。
もう読みました?
まだでしたら是非読んでみて下さい。
またよろしくお願いします。

hi-liteさんへ、
私が始めて読んだ時代小説が『震える岩』でした。
それから時代小説も読むようになりましたが、
メインは宮部作品です。

>また同じく宮部さんの三島屋変調百物語シリーズや、最近では回向院の茂七が活躍する「本所深川ふしぎ草紙」や「「初ものがたり」にハマってます。
『泣き童子』はまだですが挙げられた作品は既読で記事にしています。
左側のINDEXからリンクしますのでよろしければどうぞ。
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