「繕い裁つ人」

坂の上の洋裁店の頑固な二代目店主。
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以前シネフロで上演していたのですが、相変わらず何やかにやと忙しく。
DVD待ちだと思っていたのでいそいそと。
シアターキノA館にて。

神戸の海を見下ろす坂の上の古びた一軒家の『南洋裁店』。
店主の南市江の作る服に惚れ込んだ神戸のデパートに勤める藤井は
ブランド化の話を持ち掛けるが、
まるで"頑固じじい"のような彼女は全く興味を示さない。
一代目の祖母の仕事場で祖母が使っていたミシンで、
市江は祖母が作った服の仕立て直しとサイズ直しをする。
新作は友人の葵の店に置くのみでそれも祖母のデザインを流用する。
市江はそれで満足しており、藤井の申し出を断るが、
藤井は足繁く南洋裁店に通ってくる。
やがて年に一度の"夜会"に備えサイズ直しの客が訪れる。


冒頭のミシンを踏む市江を包み込む柔らかな逆光から、
映像の美しさに引き込まれたのですが、
仕事着に身を包んだ南市江の隙のなさと
チーズケーキを1ホール食べるときの幸せそうな無防備な表情。
やっぱり中谷美紀。

一時期、婦人服のオーダーの事務をしていたことがありまして、
デザイン画を見る機会も多かったのですが、
このデザインもまた使う生地も巷の・・・いわゆる既製服とは全く違うもの。
今年らしさを取り入れてみた・・・というデザイン画も、
素人目にはどこがどう違うのかさっぱり判らない。
ただ市江が”着る人の顔が見えない服は作らない”と言うのは
初めに"洋服を着る人ありき"ということ。
・・・トラディショナルでレトロな服は今の流行とはそぐわない。

ミシンで一針一針縫っていく。
解くときも目打ちで丁寧に・・・一本の糸すら大切に。
ミシンを踏む市江の傍のたくさんの古い型紙には
仕立て直すたびにその時々の出来事が書き込まれ、
それがその人の人生の節目の記録になっていく。

原作がある物語ですし、三島有紀子監督作品だからかもしれませんが、
"夜会"自体が良く言えば夢物語、ファンタジー、
悪く言えば物語から浮きまくる存在。
乱入してきた女学生たちの方がよっぽどリアリティがあるのだけれど、
・・・坂を上ってお団子食べてるだけの藤井。
大丸ってそんなにヒマ?(苦笑)

"夜会"に飾られた着る人を亡くした服。

人は老いていく。
時は流れていく。

葉子の車椅子が動くたびに
ウェディングドレスの裾とベールが風になびいていく。

二代目に徹する市江がその現実に向き合うとき。
食べ慣れた喫茶店のチーズケーキの味が変わったように。
泉先生の服を直したときにその兆しはあったのかもしれない。
先生にお似合いで生き生きとさせていた服。

何だか清清しい気持ちになる一本でした。
でもシネコン向きではないと思うのよねぇ、これ。

「私にドレスを作らせてください。
あなたたちが一生着続けられる服を。」
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テーマ : 映画館で観た映画
ジャンル : 映画

tag : 繕い裁つ人 中谷美紀 神戸 三島有紀子 シアターキノ

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