「戦場のアリア」(フランス/ドイツ/イギリス/ベルギー/ルーマニア 2005年)

歴史に置き去りにされた、真実の物語。
第一次世界大戦中の1914年、雪のクリスマス・イブ。
『その聖なる日、銃声が止んだ』
映画レビューはネタバレしません。
(一部核心に触れていますが・・・)
aria-st.jpg映画「戦場のアリア」OST(DVD付)
サントラ ナタリー・デッセイ ロンドン交響楽団
東芝EMI 2006-05-17

by G-Tools


 「ホテルルワンダ」を観に行ったとき、
 予告で聴いた歌声にコレは観なければ・・・と思った映画です。
 ちょうど札幌に出かけたので時間をやりくりして観てきました。
 5月13日札幌での公開初日です。

1914年、第一次世界大戦下。
フランス北部の村ではフランス・スコットランド連合軍と
ドイツ軍が連日熾烈な戦いを繰り広る中でクリスマスを迎えた。
現地に届けられた何万本ものクリスマス・ツリーとともに
ドイツ軍兵士たちは、テノール歌手のニコラウスの美声に酔っていた。
そこに敵であるスコットランド軍が歌声に合わせて
バグ・パイプで伴奏を始める。
これをきっかけに3カ国の軍は一夜限りの停戦に応じる。


観客は最初、どこの国の兵士なのか見分けが付きません。
俳優さんの顔をご存知の方はともかく、
私は言葉からドイツ軍・・・フランス軍・・・と判断していました。
塹壕の兵士たちも軍服や帽子で敵味方を区別していきます。

信仰心の薄い仏教徒には計り知れないクリスマスの重さ。
普通の青年だった兵士たちが家族と離れて過ごすクリスマスの夜、
『きよしこの夜』に反応したのは自然なことだったかもしれません。
兵として召集されたドイツ人テノール歌手シュプリンクの歌声に
フランス軍兵士たちが喝采を贈る。
おどおどと塹壕から出てきた兵士たちが自国のお酒をふるまい、
チョコレートを分け合う・・・。
失くした妻の写真を敵の将校が拾っていて渡してくれる。

・・・こうなるともう戦えない。
お互いの顔が見えている彼らはもう銃を向け合うことが出来ない。
彼らはもうドイツ軍、フランス軍、スコットランド軍ではない。
自分たちと同じ、家族が故郷に待っている。
10分後の攻撃に備えて相手を自分側の塹壕に避難させる事態になると
もう茶番・・・戦争は成立しない。

ここまでは想像が付きました。
でもクライマックスではありません。
原題は「JOYEUX NOËL」・・・メリークリスマス。
私が予告で観た聴いた『アベ・マリア』。
もう少し上手く口パクが出来なかったのかという吹き替えですが
その歌声がこの映画の全てではありません。
クリスマス・イブに塹壕の中で寄り添い眠るアナと夫シュプリンク。
同じ頃凍った大地で亡き人になった兄と並んで眠る弟ジョナサン。
兄弟もスコットランドに母を残している・・・。

バグ・パイプで奏でられる『故郷を夢見て』が
兵士たちが家族や故郷を思う心の象徴となります。
軍服に身を包んでいても後方(司令部)で安穏と過ごしている人たち。
塹壕の中で家族に会いたい、生きて家に帰りたい、
その一心で銃を取る兵士たち。
歩いて一時間の距離にいる母に会いたい、会わせてあげたい、
敵味方の区別なしの善意が産む悲劇。
でもこれは戦争での日常の光景・・・。

私は戦争というものを本やニュースやドラマや映画でしか知りません。
でも大義って何でしょう?
子どもたちの心に憎しみを植えつける教育って何でしょう?
神の戦いと言って青年たちを鼓舞して戦いに送り出す教会。
説教の言葉が真実ではないことを
奇跡のミサを行ったパーマー司祭は目の当たりにしている。
でも・・・。

これは戦場での奇跡の物語。
家族を思う人々の物語。
そして人間の愚かさと業の物語・・・。
『故郷を夢見て』のハミングが耳に残ります。
4812426537戦場のアリア
クリスチャン カリオン Christian Carion 桧垣 嗣子
竹書房 2006-04

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コメント

219.98.204.204
TBありがとうございました☆
GW明け公開の作品の中では地味な感じですが
よかったですね〜。
奇跡のクリスマスミサを体験した彼らは
本当の愛を知ったのだと思いました。
戦時下の偉い神父さまの説教は怖かったです。

219.164.162.58
Renさん、
早速のご訪問ありがとうございます。
クリスマスに上映して欲しい映画ですが、
良かったです(実感)。
>戦時下の偉い神父さまの説教は怖かったです。
あの言葉と冒頭の黒板の前の子どもたち。
奇跡のミサと正反対にある最初と最後のシーン。
背筋が寒くなりました。

219.160.20.230
おはようございます。
『戦場のアリア』をご覧になったのですね。
Woo〜わたしも見たい(´−`)

58.89.2.210
ゆにゆにさん、
良かったですよ!
「アリア」をイメージして見ると「?」ですが・・・。
そう言えば、ネコも登場します。
ネストールとフェリックス。
ふたつの名前を持つ茶ネコ。
この仔もこの映画のテーマの象徴みたいな存在です。

(チラシより抄訳)」
----つまり、それがキャッチコピーの
「その聖なる日、銃声が止んだ」。
クリスマス停戦になるわけだね。
「うん。ドイツ軍のオペラ歌手の兵士が
クリスマス・ツリーを手に塹壕から歩み出て、
美しいテノールを響かせるんだ。
バグパイプの伴奏にのせてこだまする
ドイツ軍とスコットランド軍の「聖しこの夜」の合唱。
やがてそれぞれの兵士たちがおずおずと塹壕から現れ、
ついには3ヵ国の中尉たちが集まって、
クリスマス一夜限りの休戦に合意する。
片言の外国語での挨拶、家族の写真の見せあい、
チョコやウィスキーの交換、サッカーの試合…。
そして宗派を超えたミサが行われる。
このシーンは、雪深い背景もあって
幻想的な美しさがあったよ」
----でもそこまで仲よくなっちゃうと、
戦争を再開するのが難しくなりそうだね。
「そこなんだ。
実は、奇跡はさらに続いていく。
ユーモアまじりに語られるそのシーンは、
観る人のお楽しみにして
ここで語るのは止めるけど、
ちょっと驚くような出来事が起こるよ」
----えっ、話してよ。
※じゃあ、ネタバレ注意と言うことで…。
「それは後方からの相手への攻撃を情報として教えあい、
一緒に塹壕を行ったり来たりして被弾を回避すること 。
実はここに<戦争>の持つ本質的<無為性>が語られている。
だれもいない無人の塹壕に炸裂する砲弾。
何やってんだろうって感じだね。
前線にいる個人と個人は仲がいいのに、
後ろにいる権力機構は憎しみあっている」
----ニャるほどね。
「そうそう、キリスト教も
戦争に加担していることが描かれているのも興味深い。
Secret

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