「ゆれる」(日本 2006年)

兄弟だからこそ気付いてしまうこともある。
兄弟だからこそ許せないこともある。
ゆれる オリジナルサウンドトラックゆれる オリジナルサウンドトラック
カリフラワーズ 清水光一
インポート・ミュージック・サービス 2006-07-05
by G-Tools



 久〜しぶりの映画は「ゆれる」。
 札幌では単館上映ながらもう一ヶ月近く上映しています。
 9月16日シアターキノにて。

カメラマンとして成功した猛は母の一周忌で
東京から故郷に帰ってくる。
翌日、実家で父と暮らす兄の稔、幼馴染の智恵子との3人で
近くの渓谷に向かった。
子どものようにはしゃぐ稔に聞こえぬように
猛と一緒に東京に行きたいと仄めかす智恵子。
返事をしないまま彼女から離れて野の花にカメラを向ける猛が
つり橋を見上げるともめている様子の稔と智恵子がいた。
そして、智恵子は渓流に落ちてしまう・・・。


長男の責任感とある種の諦めで家業を継いだ兄と
父と折り合いが悪かったということもあって故郷を離れた弟。
よく言えば人間関係が密接な、悪く言えば口うるさい地方で
単調に平凡に生きる兄が才能に満ち溢れ東京で自由に生きている弟に
抱く憧れとコンプレックス。
兄弟の父と弁護士の叔父の関係もそうだったのでしょう。
八ミリフィルムを残した兄弟の亡き母も
夢や憧れを封印したのかもしれません。
案外彼女の歩きたかった道を猛が進んでいたのかも。

内気さと自分への自信のなさから千恵子への想いを
打ち明けられない兄。
帰って早々ヨリを戻してしまう弟。
弟の嘘に気付いた兄が仕掛けた嫉妬交じりの小さな罠。

弟に食事代を渡した優しい兄があの渓流では幼子のようになる。
そしてあのゆれる吊り橋の上。
千恵子のジャンパーを掴んで離さなかったのは
兄が高いところが怖かったからではないから。
千恵子が猛の手を掴んで飛び立とうという想いがわかるから。
千恵子まで失ったら・・・残るのは家業と父と身動きできない自分。

兄がまくっていたシャツの袖を戻して引っかき傷を隠し、
兄を諭すように言い含めて庇う弟は
拘置所での兄の言葉や態度に戸惑い苛立っていく。
自分を隠してきた兄が初めて見せる本音。
兄に引け目を感じながら慕ってきた弟。
裁判・・・兄にとっては酷い検死報告。
そして弟の証言の時のあの眼差し、あの表情・・・。

弟が7年後に見た母の遺品の八ミリフィルムには、
弟の記憶にない、でも兄弟が小さかった頃
両親が良く連れて来てくれた渓谷が写し出される。
光の美しさ、流れの激しさ・・・あの日の風景と変わらない。
でもそこに映る父の笑顔は弟が忘れ去っていたもの。
あの吊り橋が映り込む画像に幼い自分に手を伸ばす幼い兄。
裁判で千恵子に手を差し出したという兄の証言のように。
そしてフィルムの中では兄の手に捕まって川岸を渡る自分・・・。

記憶は時間と共に薄れていくし時には忘れ去られてしまう。
記憶は見る側の先入観や感情でゆれてしまうもの。

渓谷で吊り橋の上での声が聞こえなかったように
雑踏で兄を呼ぶ弟の声はかき消される。
吊り橋での兄と千恵子の声が弟に聞こえていたように
兄の耳にも自分を呼ぶ弟の声が届いているのかも知れない。
そしてバスが来た時兄が弟に向けた眼差しと表情・・・。

兄弟だからこそ分かり合えないこともある。
兄弟だからこそ許しあえることもある。
ゆれる ゆれる
オダギリジョー 香川 照之 伊武 雅刀
バンダイビジュアル 2007-02-23
by G-Tools

ゆれるゆれる
西川 美和
ポプラ社 2006-06
by G-Tools

コメント

お久し振りです〜♪
TBありがとうござます。
私、今頃『ゆれる』見たんですョ(笑
『ディア・ドクター』見る前に、見とこうと思って・・
すごくおもしろかったです。
>記憶は見る側の先入観や感情でゆれてしまうもの。
それをこんなふうにすっきりと描いてくれた西川監督のすごさ・・・
久々におもしろい邦画を見たって感じです。

きこりさん、
切ないし痛々しいし、また残酷でもあるしと
誰に視線を置くかによってまた違った印象になる映画ですよね。
>>記憶は見る側の先入観や感情でゆれてしまうもの。
>それをこんなふうにすっきりと描いてくれた西川監督のすごさ・・・
おっしゃるとおりです、ハイ(笑)。
「ディア・ドクター」も是非♪
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